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【新薬】トラフェルミン(リティンパ)
世界初、外用で鼓膜穿孔を修復する治療薬

2019/12/27
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2019年12月9日、鼓膜穿孔治療薬トラフェルミン(商品名リティンパ耳科用250μgセット)が発売された。本製剤は9月20日に製造販売が承認され、11月19日に薬価収載された。トラフェルミンを主成分とする凍結乾燥製剤(250μg/バイアル)、添付溶解液としてベンザルコニウム塩化物液(2.5mL/バイアル)、鼓膜用ゼラチンスポンジから成るセット製剤である。適応は「鼓膜穿孔」、用法用量は「鼓膜用ゼラチンスポンジに100μg/mL溶液全量を浸潤させて成形し、鼓膜穿孔縁の新鮮創化後、鼓膜穿孔部を隙間なく塞ぐように留置する」となっている。

 現在、鼓膜穿孔に対する治療法として、鼓膜形成術や鼓膜穿孔閉鎖術などが行われている。しかし、鼓膜形成術では侵襲性が高いことや、鼓膜の浅在化や肥厚化により聴力低下の可能性があること、また鼓膜穿孔閉鎖術では、複雑な形状の穿孔や大きな穿孔を閉鎖できないといった課題があった。このため、低侵襲で穿孔の大きさ・形状を問わず、さらに外来でも実施可能な治療法の開発・早期承認が求められていた。

 リティンパは、創傷治癒促進作用を有するトラフェルミンと、創傷治癒に関与する細胞の足場素材であるゼラチンスポンジがセットされた、世界初となる外用の鼓膜穿孔治療薬である。既存のトラフェルミン製剤としては、「褥瘡、皮膚潰瘍」に対してフィブラストスプレーが、「歯周炎による歯槽骨の欠損」に対してリグロスが用いられているが、耳科領域の治療薬としては未承認であった。

 トラフェルミンの鼓膜穿孔に対する作用機序は、主に鼓膜上皮層に存在するヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)受容体に作用し、内皮細胞、線維芽細胞およびケラチノサイトの増殖や分化を刺激するというものである。これにより、上皮下結合組織の迅速な増殖を促すことで、穿孔した鼓膜を修復すると考えられている。また、鼓膜の血管新生作用も有しており、鼓膜への血流量を増加させることで、障害を受けた鼓膜の三層構造の再生をさらに促進すると推測されている。

 リティンパは、トラフェルミンをゼラチンスポンジに浸潤させることでサイズや形状の調整が可能になり、複雑な形状の穿孔や大きな穿孔でも隅々までトラフェルミンの効果を発揮させられる。また、鼓膜を閉鎖することで鼓膜の再生環境を保ちつつ、乾燥や感染防止にも有用性が高いという特徴がある。

 鼓膜穿孔後6カ月以上経過した、自然閉鎖が見込まれない鼓膜穿孔患者を対象とした医師主導治験(国内第3相試験)において、本製剤の有効性および安全性が確認された。

 国内臨床試験では、副作用として耳漏(30.0%)が報告されている。重大な副作用としては、ショック、アナフィラキシーを生じる可能性がある。

 本製剤投与に際しては、下記の事項について事前に十分注意し、把握しておく必要がある。
【適応症】
(1)鼓膜の穿孔期間・状態などから、穿孔した鼓膜の自然閉塞が見込まれない患者を対象とする。
(2)熱傷、放射線治療などにより鼓膜が障害されている患者で、障害部位から鼓膜の再生が期待されない場合は投与しない。
(3)外耳道および中耳内に、活動性炎症、感染症、耳漏を有する患者には投与しない。

【用法用量】
(1)鼓膜穿孔部の大きさにより、成形する鼓膜用ゼラチンの直径が異なるので、大きさの目安を添付文書にて確認する。
(2)本製剤投与4週間後を目安に鼓膜穿孔の閉鎖の有無を確認し、完全に閉塞しなかった場合は、必要に応じて片耳あたり合計4回まで同様の投与を行うことができる。ただし、再投与にあたって、穿孔の閉鎖傾向が認められなかった場合は、他の治療法への切り替えを考慮する。

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