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【新薬】イバブラジン(コララン)
心拍数のみを減少させる新機序の心不全治療薬

2019/11/29
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2019年11月19日、慢性心不全治療薬イバブラジン塩酸塩(商品名コララン錠2.5mg、同錠5mg、同錠7.5mg)が薬価収載と同時に発売された。本薬は9月20日に製造販売が承認された。適応は「洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全。ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」、用法用量は「通常、1回2.5mgを1日2回食後投与から開始。その後、忍容性をみながら、目標とする安静時心拍数が維持できるように、必要に応じて2週間以上の間隔で段階的に用量を増減。1回投与量は2.5、5又は7.5mgのいずれかとし、1日2回食後投与。なお、患者の状態により適宜減量」となっている。

 「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」では、心不全は「なんらかの心臓機能障害、すなわち、心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されている。現在、心不全の標準薬物療法として、ACE阻害薬、ARB、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、β遮断薬、利尿薬などが用いられている。これらの薬剤の単剤あるいは併用により長期的な心不全の悪化を予防し、生命予後を改善することが推奨されている。しかし、心不全を含む心疾患は、日本人の死因別死亡総数で悪性新生物に次ぐ第2位を占めており、特に高齢の心不全患者は予後が不良である。既存の標準治療薬以外に、追加あるいは単独使用が可能な新薬の早期開発・承認が求められている。

 イバブラジンは、洞結節にある過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネルを阻害する、新規作用機序の慢性心不全治療薬である。洞結節の自動能形成(ペースメーカー)に寄与する電流は過分極活性化陽イオン電流(If)と呼ばれており、主にHCN4チャネルにより形成される。イバブラジンは、HCN4チャネルを阻害することでIfを抑制し、拡張期脱分極相における活動電位の立ち上がり時間を遅延させる。これにより、心臓の伝導性、収縮性、再分極および血圧に影響することなく、心拍数のみを減少させる。

 β遮断薬を含む最善の標準治療を行っている慢性心不全患者を対象とした、プラセボ対照の国内第3相試験(対象:左室駆出率[LVEF]が35%以下、NYHA心機能分類がII~IV度、洞調律下での安静時心拍数が75回/分以上の日本人慢性心不全患者)および海外第3相試験(SHIFT試験、対象:LVEFが35%以下、NYHA心機能分類がII~IV度、洞調律下での安静時心拍数が70回/分以上の外国人慢性心不全患者)において、本薬の有効性および安全性が確認された。海外では、2018年10月現在、欧米など世界119カ国において慢性心不全治療薬として承認されている。

 国内外の臨床試験において、心不全(1%以上)などの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。重大な副作用としては、徐脈(心拍数減少を含む)(8.0%)、光視症(2.8%)、霧視(0.4%)、房室ブロック(0.6%)、心房細動(0.3%)、心電図QT延長(0.2%)に関連して心室性不整脈(0.1%未満)、心室性頻脈(0.2%)、心室性期外収縮(0.4%)が報告されているほか、心室細動およびトルサード・ド・ポアンを生じる可能性がある。

 本薬は原則として、β遮断薬の最大忍容量が投与されても安静時心拍数が75回/分以上の患者に投与するが、β遮断薬が使用不能な患者(β遮断薬に対する忍容性がない、禁忌など)にも投与可能である。

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