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【新薬】ラスクフロキサシン(ラスビック)
2つの標的酵素を同程度阻害する新規キノロン薬

2019/11/22
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2019年11月19日、抗菌薬ラスクフロキサシン塩酸塩(商品名ラスビック錠75mg)が薬価収載された。本薬は9月20日に製造販売が承認され、2020年1月8日に発売が予定されている。適応は「〈適応菌種〉LSFX感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、プレボテラ属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)。〈適応症〉咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎」、用法用量は「1日1回75mgを経口投与」となっている。

 現在、日本では薬剤耐性AMR)問題への対応として、抗菌薬の不適切な過剰使用を抑制する取り組みが進められている。特に日本では、世界各国と比べて経口セフェム系薬、マクロライド系薬、キノロン系薬の使用頻度が高いことから、行政当局によるAMR対策アクションプランでは、これらの抗菌薬の使用量を2020年に50%減(2013年比)とすることを目標としている。

 上記薬剤の中でもキノロン系薬は、グラム陽性菌からグラム陰性菌、非定型病原菌、結核菌など広い抗菌スペクトルを有し、様々な領域の感染症に対して汎用されている。AMR対策アクションプランでは、キノロン系薬に対する大腸菌の耐性菌増加が懸念されることから、適正使用の推進による使用量削減が求められている。

 国内の呼吸器感染症ガイドラインでは、市中肺炎に対する抗菌薬として、キノロン系薬は耐性菌出現抑制の観点から第2選択薬に位置づけられている。βラクタム系薬やマクロライド系薬といった第1選択薬に対する耐性菌出現が予測される場合、高齢者や肺に基礎疾患を有する患者の場合には、キノロン系薬が選択肢として考慮されている。

 ラスクフロキサシン(LSFX)は国内で開発されたキノロン系薬であり、キノロン標的酵素(細菌のDNA複製に必須のDNAジャイレースおよびトポイソメレースⅣ)に対する阻害活性を有する。既存のキノロン系薬がどちらか片方のキノロン標的酵素をより強く阻害するのに対して、LSFXは両方のキノロン標的酵素を同程度に阻害する特徴がある。これらのことから、既存のキノロン系薬に比べて耐性菌を作りにくいことが期待されている。呼吸器感染症患者および耳鼻咽喉科領域感染症患者に対する国内第3相試験において、本薬の有効性、安全性および忍容性が確認された。

 国内臨床試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)が11.7%に認められている。主なものは下痢、好酸球数増加(各1.3%)、ALT上昇(0.9%)などであり、重大な副作用としては白血球減少症、間質性肺炎(各0.19%)が報告されているほか、ショック、アナフィラキシー、QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)、低血糖、偽膜性大腸炎、腱障害(アキレス腱炎、腱断裂など)、肝機能障害、横紋筋融解症、痙攣、精神症状(錯乱、せん妄など)、重症筋無力症の悪化、大動脈瘤、大動脈解離を生じる可能性がある。

 薬剤使用に際しては、既存のキノロン系薬と同様に、耐性菌の発現などを防ぐ観点から適正使用を心掛ける。また、他の既存のキノロン系薬とは異なり、本薬の適応は呼吸器感染症および耳鼻咽喉科領域感染症に限定されている。

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