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【新薬】ツロクトコグ アルファ ペゴル(イスパロクト)
ペグ化で半減期を延長した第3の血液凝固第VIII因子製剤

2019/10/25
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2019年9月20日、血液凝固第VIII因子製剤ツロクトコグ アルファ ペゴル(商品名イスパロクト静注用500、同静注用1000、同静注用1500、同静注用2000、同静注用3000)の製造販売が承認された。製剤としては、各薬剤含有量に加えて、添付溶解液(生理食塩液)4mL付きのプレフィルドシリンジとなっている。適応は「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」、用法用量は「通常、1回10~30国際単位/kgを1~2mL/分で緩徐に静注」となっている(定期的に投与する場合の詳細な用法用量は添付文書を参照)。

 血友病A(先天性血液凝固第VIII因子欠乏症)は、血液凝固第VIII因子(FVIII)の機能的欠損を特徴とするX染色体連鎖劣性遺伝性の出血性疾患であり、主に男性に発症する。正常な血液凝固能が障害されることから重篤な出血傾向を呈する。出血に伴う合併症に、繰り返す関節内出血による関節の重度の腫れや痛み、関節障害、それによる身体障害がある。また、頭蓋内出血による致死的な出血を引き起こす危険性もある。血友病は全世界で約40万人が罹患している。このうち血友病Aは最も多いタイプの血友病で、日本では約5000人が罹患している。

 血友病Aの治療としては、FVIII因子製剤による補充療法が標準的治療法とされており、ルリオクトコグ アルファ(アドベイト)、オクトコグ アルファ(コージネイトFS)、オクトコグ ベータ(コバールトリイ)などが世界中で広く臨床使用されている。また近年、定期的にFVIII因子製剤を投与することで微小出血を抑制し予後を改善する定期補充療法が広がっている。静注が必要なことから、患者利便性を向上させるため血中半減期を延長させた製剤が登場しており、エフラロクトコグ アルファ(イロクテイト) 、ロノクトコグ アルファ(エイフスチラ)や、ペグ化製剤ルリオクトコグ アルファ ぺゴル(アディノベイト)およびダモクトコグ アルファ ペゴル(ジビイ)などがある。さらに、第IX因子と第X因子の両方に結合する作用を持たせた抗体医薬であるエミシズマブ(ヘムライブラ)も登場し、予後や利便性の改善が進んでいる。

 イスパロクトは、既存のFVIII因子製剤ツロクトコグ アルファ(ノボエイト)に分枝型ポリエチレングリコール(PEG)を部位特異的に結合させた、ペグ化遺伝子組換えヒト血液凝固第VIII因子製剤である。ペグ化により、非修飾型のFVIII因子より血漿中消失半減期を延長させ、投与頻度を減らすことが可能となった。

 日本人患者を含む既治療の重症型血友病A患者を対象とした国際共同第3相試験(主要試験[pathfinder 2]:12歳以上の小児および成人を対象、小児試験[pathfinder 5]:12歳未満の小児を対象)において、定期補充療法および出血時治療に有効であったことが確認された。また、国際共同第3相試験(手術試験[pathfinder 3]:12歳以上の小児および成人を対象)において、周術期の使用に有効であったことが確認された。これらの臨床試験では、予測されない安全性の問題は認められなかった。海外では、2019年2月に米国、2019年6月に欧州で承認されている。

 日本人患者を含む国際共同試験において、主な副作用(臨床検査値異常を含む)として頭痛、発疹、関節痛、AST増加、ALT増加(各1%以上)などが報告されている。重大な副作用としては、ショック、アナフィラキシーを生じる可能性がある。

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