日経メディカルのロゴ画像

【新剤型】ラニナミビル(イナビル)
自発呼吸での単回吸入で治療が完結する抗インフルエンザ薬

2019/10/04
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2019年9月4日、抗インフルエンザウイルス薬ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名イナビル吸入懸濁用160mgセット)が薬価収載された。本製剤は6月18日に製造販売が承認され、10月25日に発売が予定されている。適応は「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」、用法用量は「成人及び小児には、160mgを生食2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入」となっている。なお、同一成分の薬剤としては、2010年10月より吸入粉末製剤が臨床使用されている。

 インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で遺伝子を複製し、増殖・放出することで他の細胞に感染を拡大する。現在、インフルエンザウイルス感染症に対する治療薬として、ノイラミニダーゼ阻害薬が広く用いられている。同薬は、主にヒトA型およびB型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害することで、増殖したウイルスが感染細胞の表面から別の細胞へ拡散することを防ぐ。具体的な薬剤としては、経口製剤のオセルタミビル(タミフル)、吸入製剤のザナミビル(リレンザ)およびラニナミビル(イナビル)、注射製剤のペラミビル(ラピアクタ)が臨床使用されている。

 2018年3月からは、インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼの活性を選択的に阻害し、ウイルスのmRNA合成を阻害することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制する、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)が臨床使用されるようになった。また、2014年3月には、RNAポリメラーゼ阻害薬ファビピラビル(アビガン)が「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)」という適応で承認されているが、現時点では、インフルエンザウイルス対策(パンデミック発生時など)に使用すると国が判断した場合にのみ、患者への投与が検討される医薬品とされている。

 ノイラミニダーゼ阻害薬ラニナミビルは、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害し、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制する。ただし、既存の吸入粉末製剤は、5歳未満の小児、肺機能が著しく低下している呼吸器疾患(気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患[COPD]など)を合併する患者、吸入手技の理解が不足している患者などでは使用が困難であった。また、添加剤として乳糖水和物を含有していることから、乳製品に対する過敏症の既往歴のある患者には慎重投与となっていた。

 本製剤は、添加剤に乳糖水和物を含まず、既存の吸入粉末製剤の使用が困難な患者でも自発呼吸での吸入が可能な懸濁用製剤である。医療現場での利便性および感染予防対策を考慮し、単回使用のネブライザ吸入器を梱包したコンビネーション製品となっている。インフルエンザ感染症患者を対象とした国内第3相試験において、本製剤の有効性と安全性が確認された。2019年9月現在、海外では販売されていない。

 薬剤投与による副作用として、嘔吐(0.5%未満)などが認められている。重大な副作用としては、ショック、アナフィラキシー、気管支攣縮、呼吸困難、異常行動、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑を生じる可能性がある。

 薬剤使用に際しては、本薬剤は既存の吸入粉末製剤とは異なり、インフルエンザ感染症の予防には適応を有していない。

  • 1

この記事を読んでいる人におすすめ