2019年9月10日、統合失調症治療薬ブロナンセリンの経皮吸収型製剤(商品名ロナセンテープ20mg、同テープ30mg、同テープ40mg)が発売された。同製剤は、6月18日に製造販売が承認され、9月4日に薬価収載された。適応は「統合失調症」、用法用量は「成人に1日1回40mgを貼付。患者の状態により適宜増減するが、1日1回80mgまで。なお、胸部、腹部、背部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替える」となっている。同一成分ブロナンセリンとしては、2008年4月から錠剤および散剤が臨床使用されている。

 統合失調症は、陽性症状(妄想、幻覚など)および陰性症状(感情の平板化、意欲の欠如など)を主症状とし、長期にわたる維持療法が必要な慢性の精神疾患であり、維持治療期における精神症状の再発、再燃防止と患者のQOL向上が重要な治療目標となる。

 この維持治療に使用する薬剤として、以前は定型抗精神病薬のクロルプロマジン(ウインタミンコントミン他)やハロペリドール(セレネース他)などが広く用いられてきたが、最近では、統合失調症の治療ガイドラインにおいて、非定型抗精神病薬が第一選択薬に位置づけられている。具体的には、リスペリドン(リスパダール他)、パリペリドン(インヴェガゼプリオン他)、ブロナンセリン(ロナセン他)、ペロスピロン(ルーラン他)などのセロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)、オランザピン(ジプレキサ他)、クエチアピン(セロクエル他)、アセナピン(シクレスト)、クロザピン(クロザリル)などの多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)、ドパミン部分作動薬(DPA)のアリピプラゾール(エビリファイ他)などが使用されている。

 ブロナンセリンは、ドパミンD2受容体およびセロトニン5-HT2A受容体に対して、強い遮断作用を有するSDAである。他のSDAよりも受容体選択性が高いことから、SDAの最大の問題点であった性機能障害などの高プロラクチン血症や、定型抗精神病薬に見られた錐体外路系の副作用の発現が少ない薬剤とされている。

 ブロナンセリンの経皮吸収型製剤の特徴として、(1)用法が1日1回貼付(経口製剤は1日2回)、(2)時間経過に伴う血漿中濃度の変動が既存の経口剤より小さい、(3)小腸および肝臓での初回通過効果を受けないことから、消化管のCYP3A4の阻害や誘導作用を有する薬剤との併用による相互作用を受けにくい――といった点が期待されている。さらに、抗精神病薬としては初の剤型(貼付製剤)であることから、患者が医療スタッフと治療方針について意思決定する共同作業(SDM)において選択可能な剤型の選択肢が増え、患者のアドヒアランス向上に寄与できる可能性が期待されている。

 急性期の統合失調症患者を対象としたプラセボ対照の国際共同第3相試験、および統合失調症患者を対象として既存のブロナンセリン経口剤からの切り替えを行った国内第3相長期投与試験(52週間)において、本製剤の有効性および安全性が確認された。本薬は、2019年9月現在、海外では発売されていない。

 国内外の臨床試験から、副作用(臨床検査値異常を含む)が59.5~68.5%に認められている。主なものはパーキンソン症候群(13.6%)、適用部位紅斑(11.7%)、アカシジア(10.4%)、プロラクチン上昇、統合失調症の悪化、適用部位そう痒感、体重増加(各5%以上)などであり、重大な副作用としては高血糖(0.1%)、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、悪性症候群(Syndrome malin)、遅発性ジスキネジア、麻痺性イレウス、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、横紋筋融解症、無顆粒球症、白血球減少、肺塞栓症、深部静脈血栓症、肝機能障害を生じる可能性がある。

 既存の経口製剤から本製剤に切り替える場合には、次の投与予定時刻に切り替えることが可能である。その場合には、患者の状態を十分観察し、添付文書の「臨床成績」の項を参考に用量を選択する。また、本製剤から経口製剤への切り替えでは、経口剤の用法用量に従って1回4mg、1日2回食後投与から開始して、徐々に増量する。なお、本製剤と経口製剤を同時期に投与することにより過量投与とならないことにも留意する。