2019年6月18日、抗悪性腫瘍薬ネシツムマブ(商品名ポートラーザ点滴静注液800mg)の製造販売が承認された。適応は「切除不能な進行・再発の扁平上皮非小細胞肺癌」、用法用量は「ゲムシタビン及びシスプラチンとの併用において、成人に1回800mgをおよそ60分かけて点滴静注。週1回投与を2週連続し、3週目は休薬。これを1コースとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。また、薬剤投与中に有害事象が発現した場合には、休薬・減量又は中止する(詳細は添付文書参照)」となっている。

 年齢別に見た肺癌の罹患率および死亡率は、ともに40歳代後半から増加し始め、高齢になるに従い増加する傾向にある。肺癌の死亡率の年次推移は、1960年代~1980年代に急激に増加し、1990年代後半以降は男女とも若干の減少傾向が認められるものの、現在も肺癌は悪性腫瘍による男性の死因の第1位となっている。罹患率と死亡率には大きな差がなく、肺癌患者の生存率の低さが課題となっている。

 肺癌の80%以上が非小細胞肺癌NSCLC)とされており、発見時には既に遠隔転移を来している症例も少なくない。NSCLCは非扁平上皮癌(NSQ-NSCLC)と扁平上皮癌(SQ-NSCLC)に大別されている。従来、外科的手術などで切除不能となったNSCLCの化学療法は、シスプラチン(CDDP)などのプラチナ製剤とゲムシタビン(GEM)などの第3世代抗癌薬との併用療法が主流であった。その後、癌細胞の増殖に関与する上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)として、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、アファチニブ(ジオトリフ)、オシメルチニブ(タグリッソ)、ダコミチニブ(ビジンプロ)が臨床使用されるようになり、NSCLCのうちEGFR遺伝子変異のある患者の予後改善が進んできた。

 ネシツムマブは、EGFRに対するモノクローナル抗体であり、EGFRに結合してEGFRを介したシグナル伝達を阻害することにより、腫瘍の抑制を抑制すると考えられている。同じ抗EGFRモノクローナル抗体としては、セツキシマブ(アービタックス)、パニツムマブ(ベクティビックス)が結腸・直腸癌に使用されているが、NSCLCの適応は有していない。

 化学療法未治療の局所進行性または転移性のSQ-NSCLC患者を対象とした国内第1b/2相試験(JFCM試験)および外国第3相試験(SQUIRE試験)において、ネシツムマブ/GEM/CDDP併用療法について、GEM/CDDP併用療法と比較して統計学的に有意な有効性(全生存期間の延長)が認められた。海外では、2019年1月現在、米国およびEUなど世界44の国または地域において、SQ-NSCLCに関する適応で承認されている。

 国内外の臨床試験で認められた副作用としては、皮膚障害(発疹、ざ瘡様皮膚炎、皮膚乾燥、そう痒、皮膚亀裂、爪囲炎、手掌・足底発疹知覚不全症候群など;78.5%)、食欲減退、口内炎(各10%以上)などがある。重大な副作用として、動脈血栓塞栓症(2.5%)、静脈血栓塞栓症(5.4%)、Infusion reaction(1.1%)、低マグネシウム血症(26.4%)、間質性肺疾患(0.6%)、重度の皮膚障害(8.3%)、発熱性好中球減少症(0.8%)、重度の下痢(1.1%)、出血(5.1%)が報告されている。