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【新薬】パチシラン(オンパットロ)
TTR型FAPを治療する国内初のRNA干渉治療薬

2019/08/30
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2019年9月4日、トランスサイレチン型アミロイドーシス治療薬パチシランナトリウム(商品名オンパットロ点滴静注2mg/mL)が薬価収載される。適応は「トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー」、用法用量は「成人、3週に1回0.3mg/kg、体重104kg以上では3週に1回31.2mgを点滴静注。いずれの場合にも70分間以上(投与開始後15分間は約1mL/分、その後は約3mL/分)かけて投与」となっている。

 家族性アミロイドポリニューロパチーFAP)は、成人期に末梢神経、自律神経系、心、胃、消化管、眼などにアミロイド沈着を来たし、臓器障害を引き起こすことで全身性に様々な症状を呈する、予後不良の常染色体優生の全身性アミロイドーシスである。FAPの中でも、トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異が原因となるTTR型FAPは、最も患者数が多いことが報告されている。患者数は全世界で約5万人おり、日本はポルトガル、スウェーデンに次ぐ患者集積地と考えられている。20~30歳代に発症するケースが多く、障害発生率と死亡率が高いことが課題となっていた。

 従来、TTR型FAPに対する治療としては、疾患の進行抑制に関するエビデンスが確立されている肝移植を中心に、様々な対症療法が行われてきた。2013年11月からは、TTRの4量体を安定化させることでアミロイドの形成を抑制するタファミジスメグルミン(ビンダケル)が臨床使用されるようになり、治療成績が向上してきた。

 パチシランナトリウムは、TTRメッセンジャーRNAを標的として遺伝子発現を抑制(サイレンシング)し、TTR蛋白質が作られる前にその産生を阻害するRNA干渉治療薬である。具体的には、肝臓での変異型および野生型TTRmRNAを分解させることで血清中TTR蛋白質を減少させ、体内組織でのTTRの沈着を抑制することで、TTR型FAPの症状を改善させるとともに進行を抑制する。

 日本人患者を含むTTR型FAP患者を対象とした国際共同第3相試験において、本薬の有効性と安全性が確認された。海外では、2018年8月に米国および欧州(EU)で承認されている。日本では、2016年6月に希少疾病用医薬品に指定されていた。

 国際共同第3相試験で副作用が63.5%に認められている。主なものは下痢(9.5%)、末梢性浮腫(6.8%)、無力症(6.1%)などであり、重大な副作用としてはInfusion reaction(27.0%)、房室ブロック(0.7%)が報告されている。中でもInfusion reactionに関しては、薬剤投与中または投与開始2時間以内に発現する可能性があるため、下記の事項を把握しておく必要がある。

(1)前投薬の投与
 本薬投与の少なくとも60分前に下記の薬剤を投与する。なお、患者の症状、状態により前投薬の投与量の調節を考慮する。
・コルチコステロイド(デキサメタゾン10mgまたは同等薬、静脈内投与)
・アセトアミノフェン(500mg、経口投与)
・H1拮抗薬(クロルフェニラミンマレイン酸塩5mgまたは同等薬、静脈内投与)
・H2拮抗薬(ファモチジン20mgまたは同等薬、静脈内投与)

(2)副作用発現時の対処
 Infusion reactionの発現時には、投与速度を下げる、または投与を中断し、適切な処置(対症療法など)を行い、症状が消失した後に投与速度を下げて再投与する。なお、重度のInfusion reaction発現時には、本薬の投与を中止する。

 TTR型FAP患者は心筋症などの心症状を伴うことが多く、因果関係は不明であるものの、心臓関連死などが報告されている。このことから、本薬の投与中は定期的な心機能検査(心電図、心エコーなど)を行うなど、患者の状態を十分に観察することが必要である。また、本薬はTTRタンパク質を減少させることで、血清中ビタミンAの減少を招くことから、ビタミンAを補給(1日推奨用量の約2500IUを超えない)するよう患者に指導する。なお、夜盲などビタミンA欠乏症の症状が発現する可能性があることにも注意する。

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