2019年6月18日、抗悪性腫瘍薬キザルチニブ塩酸塩(商品名ヴァンフリタ錠17.7mg、同錠26.5mg)の製造販売が承認された。適応は「再発又は難治性のFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病」、用法用量は「成人に1日1回、26.5mgを2週間投与。それ以降は1日1回53mgを投与。なお、患者の状態により適宜減量する。また、副作用の発現状況により休薬、減量又は中止する(添付文書を参照)」となっている。

 急性骨髄性白血病AML)は、分化・成熟能が障害された幼若骨髄系細胞のクローナルな自律性増殖を特徴とする、多様性に富む血液腫瘍である。骨髄において白血病細胞が異常に増殖する結果、正常な造血機能が阻害され、白血球減少、貧血、血小板減少に伴う様々な症状を呈する。適切な治療がなされない場合には、感染症や出血により致死的となる重篤な疾患である。

 AMLの治療法としては、強力な化学療法としてアントラサイクリン系薬とシタラビン(キロサイド他)などの多剤併用療法を用いた寛解導入療法と寛解導入後療法が中心となっている。また、化学療法で良好な長期予後が得られない場合には、同種造血幹細胞移植が適応となる。

 AMLは、特定の遺伝的要因によって患者の転帰が悪化する傾向がある。中でも、クラス3受容体チロシンキナーゼの1つであるFMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)の遺伝子変異は、予後不良の白血病のサブタイプとして知られている。FLT3活性化変異はAML患者の約1/3で認められ、遺伝子内部縦列重複(ITD)変異とチロシンキナーゼドメイン(TKD)変異が多く報告されている。中でもFLT3-ITD変異は、最も高頻度に認められている遺伝子異常であり、AMLにおける完全寛解持続期間および無再発生存期間に関する最も重要な予後因子の1つである。

 キザルチニブは、2018年12月から臨床使用されているギルテリニチブ(ゾスパタ)に次ぐFLT3阻害薬である。具体的には、ITD変異を有するFLT3 に結合し、FLT3 を介したシグナル伝達を阻害することにより、FLT3-ITD 遺伝子変異を有する腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

 FLT3-ITD変異を有する再発または難治性のAML患者を対象とした海外第3相試験(QuANTUM-R試験、日本を除くアジアおよび欧米で実施)、および国内第2相試験において、有効性と安全性が確認された。なお、既存のギルテリチニブと有効性と安全性を比較した臨床試験成績は得られていないことから、現時点では両者の使い分けについては不明である。2019年6月現在、海外では発売されていない。日本では、2018年9月に希少疾病用医薬品に指定されていた。

 臨床試験などで認められた副作用(臨床検査値異常を含む)としては、悪心(31.7%)、嘔吐(18.3%)、下痢(11.5%)、無力症(10%以上)などがある。重大な副作用として、QT間隔延長(26.3%)、心室性不整脈(Torsade de Pointesを含む)、感染症、出血、骨髄抑制のほか、心筋梗塞(0.4%)、急性腎障害(1.4%)、間質性肺疾患を生じる可能性がある。

 薬剤使用に際しては、既存のギルテリチニブと同様に、事前に体外診断薬を用いたFLT3遺伝子変異検査を行い、FLT3-ITD遺伝子変異陽性であることを確認する必要がある。