2019年6月18日、抗悪性腫瘍薬エヌトレクチニブ(商品名ロズリートレクカプセル100mg、同カプセル200mg)の製造販売が承認された。適応は「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌」、用法用量は「成人には1日1回600mg。患者の状態により適宜減量する。小児には1日1回300mg/m2、最高投与量は1日1回600mgを超えないこと。なお、体表面積別の小児患者の投与量に関しては添付文書を参照」となっている。

 神経栄養因子受容体チロシンキナーゼNTRK融合遺伝子とは、トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)蛋白質(TRKA、TRKB、TRKC)をコードするNTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3)と他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)とが染色体転座を起こした結果、両者が融合して生じる異常な遺伝子である。このNTRK融合遺伝子から作られる融合TRKにより、癌細胞の増殖が促進されると考えられている。NTRK融合遺伝子の発生は非常に稀であるが、成人や小児の様々な固形癌や肉腫などで確認されている。NTRK融合遺伝子の陽性率は、一般的に結腸・直腸癌など患者数の多い癌では低く、乳腺分泌癌など患者数の少ない癌で高い傾向がある。このことから、患者数は極めて少ないと推定されている。

 エヌトレクチニブは、NTRK遺伝子によってコードされるTRK、ROS1遺伝子によってコードされるROS1、およびALK遺伝子によってコードされる未分化リンパ腫キナーゼALKなどのチロシンキナーゼに対する阻害作用を有する低分子化合物である。TRK融合蛋白などのリン酸化を阻害し、下流のシグナル伝達分子のリン酸化を阻害することにより、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。

 18歳以上のNTRK、ROS1またはALK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌患者を対象とした国際共同第2相試験(STARTRK-2試験)、22歳未満のNTRK、ROS1またはALK融合遺伝子陽性などの進行・再発の小児固形癌患者を対象とした海外第1/1b相試験(STARTRK-NG試験)において、本薬の有効性と安全性が確認された。海外では、2019年3月現在、米国およびEUにおいて承認に向けて審査中である。日本では、2018年9月に先駆け審査指定制度の対象品目となり、2018年12月に希少疾病用医薬品に指定されていた。

 国際共同第2相試験から、本薬投与による副作用が90.5%に認められている。主なものは味覚異常(46.0%)、疲労(38.1%)、めまい(30.2%)、便秘(28.6%)、下痢(27.0%)、浮腫(27.0%)、体重増加(22.2%)、貧血(20.6%)などであり、重大な副作用としては認知障害、運動失調(28.6%)、心臓障害(4.8%)、間質性肺疾患(1.6%)のほか、QT間隔延長が報告されている。

 薬剤使用に際しては、心臓障害が発現する可能性があることから、薬剤投与開始前および投与中は、適宜心機能(心電図、心エコーなど)やCKなどの検査を行うなど、患者の状態を十分観察する。また、薬剤投与を予定している妊娠可能な女性患者や、パートナーが妊娠する可能性がある男性患者には、投与中および投与後一定期間は適切な避妊を行うように指導する必要がある。