2019年7月3日、抗ウイルス化学療法薬ダルナビルエタノール付加物/コビシスタット/エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩配合錠(商品名シムツーザ配合錠)が薬価収載された。本薬は、6月18日に製造販売が承認された。適応は「HIV-1感染症」、用法用量は「成人及び12歳以上かつ体重40㎏以上の小児に1日1回1錠、食事中又は食直後に経口投与」となっている。

 ヒト免疫不全ウイルスHIV)は、主としてCD4陽性Tリンパ球とマクロファージ系の細胞に感染するレトロウイルスである。現在、全世界では新規HIV患者数が先進国を中心に減少傾向にあるが、日本では新規HIV感染患者数および後天性免疫不全症候群AIDS)患者数は横ばいの状況が続いており、臨床現場では早期発見や治療の十分な管理などの重要性が増している。

 HIV感染症の病期は、急性感染期、無症候期、AIDS期に大別されている。急性期では発熱、発疹、リンパ節腫脹などの急性感染症状が発現し、その後、無症候期として患者自身の免疫機構とHIVが拮抗した状態が長期間続く。さらに、治療を開始しなければAIDS期としてHIV増殖が続くことで、患者の免疫力が徐々に低下し、日和見感染を併発しやすい状態に陥る。初感染からAIDS期に至るまでの期間は個々の症例で異なるものの、一般的には、抗HIV治療を行わない場合、AIDS発症後死亡に至るまでの期間は約2年程度と考えられている。

 現在、HIV治療では核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻害薬が臨床使用されている。現在、これらの薬剤を3~4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が治療の標準となっている。

 ARTでは、HIVを抑制する効果がより強力な薬剤(INSTI、NNRTI、リトナビル[rtv]またはコビシスタット[cobi]併用のPI)を「キードラッグ」、キードラッグと併用してウイルス抑制効果を高める役割を持つNRTIを「バックボーン」と称し、キードラッグ1剤にNRTI 2剤を併用する組み合わせが一般的となっている。現在、国内の抗HIV治療ガイドラインでは、初期のARTとして「INSTI 1剤+NRTI 2剤」、「PI 1剤+NRTI 2剤」、「NNRTI 1剤+NRTI 2剤」が推奨されている。

 シムツーザは、1錠中に有効成分として、PIであるダルナビル(DRV)800mg、薬物動態学的増強因子のCOBI 150mg、NRTIであるエムトリシタビン(FTC)200mgおよびテノホビルアラフェナミド(TAF)10mgの4成分を固定用量で配合した製剤である。本薬は、キードラッグとしてPIを配合した薬剤としては国内で初めて、「cobi併用のPI 1剤+NRTI 2剤」のARTを1日1回1錠の投与で可能とする薬剤である。

 海外第3相ランダム化二重盲検比較試験(AMBER試験、対象:抗HIV薬の治療経験がない成人HIV-1感染患者)および海外第3相試験(EMERALD試験、対象:PI、薬物動態学的増強因子およびFTC/テノホビルジソプロキシルフマル酸塩[TDF]配合剤の併用投与によりウイルス学的抑制が得られている成人HIV-1感染患者)において、本薬の有効性と安全性が確認された。

 薬剤投与により副作用(臨床検査値異常を含む)が30.9~50.3%に認められている。主な副作用として、頭痛、下痢、腹痛、発疹、総コレステロール増加、LDLコレステロール増加、トリグリセリド増加、AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加、膵型アミラーゼ増加、血中クレアチニン増加(各5%以上)などがある。重大な副作用としては、急性膵炎(0.1%)のほか、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿庖症、肝機能障害、黄疸、腎不全または重度の腎機能障害、乳酸アシドーシスを生じる可能性がある。

 本薬の使用に際しては、以下のいずれかのHIV-1患者に対して使用することに留意する。
(1)抗HIV薬の治療経験がない患者
(2)本薬への切り替え前に、抗HIV薬による治療が6カ月以上変更なく継続され、ウイルス学的抑制(HIV-1 RNA量が50copies/mL未満)が得られており、DRVに対する耐性関連変異を持たず、本薬への切り替えが適切と判断される患者