2019年5月22日、注意欠陥/多動性障害治療薬リスデキサンフェタミンメシル酸塩(商品名ビバンセカプセル20mg、同カプセル30mg)が薬価収載された。本薬は3月26日に製造販売が承認された。適応は「小児期における注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」、用法用量は「1日1回30mg、朝に投与。症状により、1日70mgを超えない範囲で適宜増減する。増量は1週間以上の間隔をあけて1日20mgを超えない範囲で行う」となっている。

 注意欠陥/多動性障害AD/HD)は、不注意・多動性・衝動性の3症状を主な特徴とする神経発達症群(発達障害)の1つで、心理社会的治療・支援と薬物療法により治療可能な脳機能障害である。2013年5月に公開されたDSM-5(米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル)では、子供のAD/HDの有病率は5%、成人では2.5%と推定されている。

 現在、AD/HDの薬物療法として、中枢刺激薬メチルフェニデート塩酸塩(コンサータ)、非中枢刺激薬アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ他)、選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬グアンファシン塩酸塩(インチュニブ)が使用されているが、さらに新たな治療選択肢も求められている。

 リスデキサンフェタミンメシル酸塩は、活性体であるd-アンフェタミンとアミノ酸のL-リジンがアミド結合で共有結合したプロドラッグである。活性体のd-アンフェタミンは、中枢神経刺激活性を有する交感神経作動アミンであり、日本では覚醒剤に指定されている。AD/HDに対する治療効果の作用機序は明確には解明されていないものの、ノルアドレナリントランスポーター(NET)およびドパミントランスポーター(DAT)阻害作用や、脳内における神経伝達物質であるノルアドレナリンおよびドパミンの放出促進により、シナプス間隙のノルアドレナリンおよびドパミン濃度が増加することによる効果と考えられている。また、弱いモノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用を示すd-アンフェタミンが神経伝達物質の代謝を減少させることも、AD/HDの治療効果に寄与していると考えられている。

 リスデキサンフェタミン自体は、NETおよびDAT阻害作用を示さず、薬理学的に不活性である。しかし、体内においては主に赤血球のアミノペプチダーゼによって、d-アンフェタミンとL-リジンに加水分解される。これにより、d-アンフェタミン即放製剤の経口または静脈内投与で見られるような、血漿中d-アンフェタミン濃度の急速かつ著しい上昇を抑えることが可能となり、追加の徐放化の技術を用いることなく、1日1回投与でも有効性と安全性を確保した薬物動態プロファイルを有している。

 小児AD/HD患者(6歳以上18歳未満)を対象とした第2/3相二重盲検並行群間比較試験および第3相長期投与試験で、本薬の有効性が確認された。海外では、2007年2月に米国で承認されて以降、欧米など各国で承認されている。

 臨床試験などにおいて、副作用が89.5%に認められている。主なものは食欲減退(79.1%)、不眠(45.3%)、体重減少(25.6%)、頭痛(18.0%)、悪心(11.0%)などであり、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、心筋症、依存性を生じる可能性がある。

 なお、本薬は覚醒剤原料に指定されており、不正使用および依存・乱用などの防止の観点から、厚生労働省より承認条件として「(1)医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること。(2)本薬が、AD/HDの診断、治療に精通した医師によって適切な患者に対してのみ処方されるとともに、薬物依存を含む本薬のリスクなどについて十分に管理できる医療機関および薬局においてのみ取り扱われるよう、製造販売にあたって流通管理の厳格化など必要な措置を講じること。(3)使用実態下における乱用・依存性に関する評価が行われるまでの間は、他のAD/HD 治療薬が効果不十分な場合にのみ使用されるよう必要な措置を講じること」との注意喚起がなされていることに十分留意する。