2019年5月30日、抗悪性腫瘍薬アパルタミド(商品名アーリーダ錠60mg)が発売された。本薬は3月26日に製造承認され、5月22日に薬価収載された。適応は「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌」、用法用量は「1日1回240mgを経口投与。患者の状態により適宜減量」となっている。

 前立腺癌は、男性ホルモンであるアンドロゲンにより増殖する癌であり、特に初期治療では、アンドロゲンの作用を抑制することが目標となる。具体的には、アンドロゲンを産生する精巣を摘除する外科手術(外科的去勢法)、アンドロゲンの作用を抑制する内科的治療(ホルモン療法)が行われている。

 中でもホルモン療法は、有効性が外科的去勢法と同等(非劣性)であることが確認されたことから、現在、中心的な治療として広く行われている。黄体形成ホルモン(LH)が主に下垂体前葉を通して精巣でのアンドロゲンの産生・分泌を促進させることから、ホルモン療法では、LHの作用を抑制するゴセレリン(ゾラデックス)やリュープロレリン(リュープリン)といった黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)アゴニストが使用されている。また、前立腺内のアンドロゲンのうち40%は副腎由来とされており、LH-RHアゴニストだけではアンドロゲン合成を抑制できないことから、現在では、副腎由来のアンドロゲンをも抑制するビカルタミド(カソデックス他)、フルタミド(オダイン他)、クロルマジノン(プロスタール他)などの抗アンドロゲン剤を併用するMAB療法も行われている。

 しかし、ホルモン療法を長期間継続すると、徐々にホルモン療法に抵抗性を示す癌細胞が増え、治療効果が消失してしまうことが知られている。このホルモン療法抵抗性となった状態は、外科的去勢後に症状が増悪した患者と合わせて「去勢抵抗性前立腺癌CRPC)」と称されている。そこでCRPCに対して、アンドロゲン合成に関与する酵素であるCYP17を阻害するアビラテロン酸エステル(ザイティガ)が登場したほか、アンドロゲン受容体(AR)に競合的に結合してアンドロゲンのシグナル伝達を阻害するエンザルタミド(イクスタンジ)が臨床使用されている。

 今回承認されたアパルタミドは、ARに結合してアンドロゲンのシグナル伝達を阻害する抗アンドロゲン剤として、既存のエンザルタミドに次ぐ薬剤である。その作用機序は、(1)細胞質内ARに対するアンドロゲン結合を阻害、(2)細胞質内ARの核内移行を阻害、(3)核膜ARと転写因子領域との結合を阻止し、ARを介した転写を抑制するというもの。日本人を含む遠隔転移を有しないCRPC患者を対象とした国際共同第3相試験(ARN-509-003試験)から、本薬の有効性と安全性が確認された。海外では、2019年1月現在、5カ国(米国、カナダ、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル)および欧州で承認されている。

 国際共同第3相試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)が70.4%に認められている。主なものは疲労(22.5%)、皮疹(15.3%)、甲状腺機能低下症(4.7%)、そう痒症(4.1%)、体重減少(3.4%)などがあり、重大な副作用としては痙攣発作、心臓障害、重度の皮膚障害が報告されている。薬剤使用中に副作用が発現した場合には、添付文書に記載のある基準を考慮して、休薬、減量または中止する。