2019年5月28日、造血幹細胞移植前治療薬チオテパ(商品名リサイオ点滴静注液100mg)が発売された。本薬は、3月26日に製造販売が承認され、5月22日に薬価収載された。適応は「小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療」、用法用量は「メルファランとの併用において、1日1回200mg/m2を24時間かけて点滴静注。これを2日間連続で行い、5日間休薬した後、さらに同用量を2日間連続投与。なお、患者の状態により適宜減量」となっている。

 小児悪性固形腫瘍は、成人の固形腫瘍と比較して化学療法に対する感受性が良好であり、臨床現場で積極的に造血幹細胞移植HSCT)が実施されてきた。HSCTは、抗癌剤や放射線照射を極量まで増やす骨髄破壊的な前治療を行って難治性癌を根絶した後に、患者自身の正常な造血幹細胞を経静脈的に輸注することで、造血能の再構築を図る補助療法である。

 チオテパは、腫瘍細胞のDNAをアルキル化し、DNA合成を阻害することで腫瘍の増殖を抑制する、エチレンイミン系抗腫瘍性アルキル化薬である。国内では、1958年より「テスパミン」として慢性リンパ性白血病などの適応で臨床使用されていたが、2006年以降原薬の供給が中止され、2009年に製造販売が中止されていた。

 欧米では、チオテパは数十年間にわたり臨床使用されてきた。2010年には、血液疾患および固形腫瘍に対して、他の化学療法薬との併用によるHSCTの前治療薬として欧州で承認された。なお、国内のチオテパ製造販売期間中にも、適応外ではあったものの欧米での使用に倣い、HSCTの前治療薬として使用されていた。

 こうした状況を踏まえ、日本血液学会などの関連学会から、HSCTの前治療薬に対するチオテパ製剤の早期開発・承認の要望が出されていた。「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(2012年3月)にて審議された結果、開発が進み、今回の承認に至った。

 リサイオの承認に際しては、国内外のチオテパ製剤の使用実績や安全性情報を用いており、薬物動態に関しては国内第1相試験を実施して評価している。海外では、リサイオと同一処方の製剤は承認されていないものの、HSCTの前治療薬に対するチオテパ製剤としては、2018年10月現在、世界35の国または地域で承認されている。なお、2019年3月には、「悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療」の適応追加の申請が行われている。

 小児悪性固形腫瘍患者を対象とした、抗癌剤メルファラン(アルケラン)との併用による国内第1相試験では、全症例に副作用が認められている。主な副作用は口内炎、嘔吐(各100%)、下痢(88.9%)、食欲不振(77.8%)など。重大な副作用として胃腸障害(100%)、皮膚障害(88.9%)、骨髄抑制(55.6%)、浮腫(44.4%)、感染症(33.3%)、腎機能障害、肺水腫、胸水、心嚢液貯留(各22.2%)、出血(11.1%)が報告されているほか、血栓性微小血管症、肝中心静脈閉塞症(VOD)/類洞閉塞症候群(SOS)が現れる可能性があるので注意が必要である。