2019年4月8日、抗ウイルス化学療法薬ビクテグラビルナトリウム/エムトリシタビン/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩(商品名ビクタルビ配合錠)が発売された。本薬は、3月26日に製造承認、4月3日に薬価収載されていた。適応は「HIV-1感染症」、用法用量は「成人に1回1錠、1日1回経口投与」となっている。

 ヒト免疫不全ウイルスHIV)は、主としてCD4陽性Tリンパ球とマクロファージ系の細胞に感染するレトロウイルスである。現在、全世界では新規HIV患者数が先進国を中心に減少傾向にあるが、日本では新規HIV感染患者数および後天性免疫不全症候群AIDS)患者数は横ばいの状況が続いており、臨床現場では早期発見や治療の管理などの重要性が増している。

 HIV感染症の病期は、急性感染期、無症候期、AIDS期に大別されている。急性期では発熱、発疹、リンパ節腫脹などの急性感染症状が発現し、その後、無症候期として患者自身の免疫機構とHIVが拮抗した状態が長期間続く。さらに、治療を開始しなければAIDS期としてHIV増殖が続くことで、患者の免疫力が徐々に低下し、日和見感染を併発しやすい状態に陥る。初感染からAIDS期に至るまでの期間は個々の症例で異なるものの、一般的には、抗HIV治療を行わない場合、AIDS発症後死亡に至るまでの期間は約2年程度と考えられている。

 現在、HIV治療では核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻害薬が臨床使用されている。現在、これらの薬剤を3~4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が治療の標準となっている。

 ARTでは、HIVを抑制する効果がより強力な薬剤(INSTI、NNRTI、リトナビル併用のPI)を「キードラッグ」、キードラッグと併用してウイルス抑制効果を高める役割を持つNRTIを「バックボーン」と称し、キードラッグ1剤にNRTI 2剤を併用する組み合わせが一般的となっている。現在、国内の抗HIV治療ガイドラインでは、初期のARTとして「INSTI 1剤+NRTI 2剤」、「リトナビルを併用したPI 1剤+NRTI 2剤」、「NNRTI 1剤+NRTI 2剤」が推奨されている。

 ビクタルビは、「INSTI 1剤+NRTI 2剤」の配合製剤であり、有効成分として新規のINSTIであるビクテグラビル(BIC)と、NRTIのエムトリシタビン(FTC;エムトリバ)およびテノホビルアラフェナミド(TAF)の3成分を配合している。

 ビクタルビの有効成分の一部であるNRTI 2剤の配合製剤としてデシコビ配合錠HTが臨床使用されている。また、INSTIベースの3剤配合製剤としてはトリーメクがあり、INSTIとNRTI 2剤に加え薬物動態学的増強因子のコビシスタットを配合したゲンボイヤおよびスタリビルドも使用されている。

 治療歴のないHIV-1感染症の成人患者および抗HIV薬によりウイルス学的抑制が得られている成人患者を対象とした各海外臨床試験において、本薬の有効性と安全性が確認された。海外では、2019年2月現在、米国やEUなど世界43カ国で承認されている。

 海外臨床試験で副作用が13.5~21.9%に認められている。主なものは頭痛、浮動性めまい、悪心、下痢、疲労(各2%以上)などであり、重大な副作用として腎不全または重度の腎障害、乳酸アシドーシスを生じる可能性がある。

 本薬を使用する対象は、「抗HIV薬による治療経験がない成人患者」または「ウイルス学的失敗の経験がなく、切り替え前3カ月間以上においてウイルス学的抑制(HIV-1 RNA量が50copies/mL未満)が得られ、ビクテグラビル、エムトリシタビン、テノホビルに対する耐性関連変異を持たず、切り替えが適正であると判断される抗HIV薬既存治療成人患者」であることに留意する。