2019年3月25日、抗てんかん薬ラコサミドの点滴静注製剤(商品名ビムパット点滴静注200mg)が発売された。適応は「一時的に経口投与ができないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する経口ラコサミド製剤の代替療法」、用法用量は「ラコサミド経口投与から切り替える場合は、経口投与と同じ1日用量及び投与回数で、1回量を30分から60分かけて点滴静注。経口投与前に投与する場合は、成人(50kg以上の小児を含む)で1日100mg、小児(4歳以上)で1日2mg/kgより開始し、維持用量に調節。用法用量の詳細は添付文書参照」となっている。なお、この点滴注射製剤は、一時的に経口製剤が使用できない患者が対象であり、国内外の臨床試験では5日間を超えた点滴静脈投与の使用経験がないことも踏まえて、経口投与が可能となった場合には速やかに経口製剤に切り替える。

 てんかんは、脳内の神経細胞の異常な電気的興奮に伴って痙攣や意識障害などが発作的に起こる慢性的な疾患であり、小児、成人、高齢者を問わず、また性別によらず幅広く発症する。発作のタイプにより、てんかん全体の約6割を占める部分てんかんと、約4割を占める全般てんかんに大別される。このうち、部分てんかんは、電気信号の異常が脳の一部分に限定されて起こる発作だが、中には異常が二次的に脳全体に広がり、全般性の発作になる場合がある(二次性全般化発作)。

 部分てんかんの薬物治療では、カルバマゼピン(テグレトール他)、ラモトリギン(ラミクタール他)、レベチラセタム(イーケプラ)、ゾニサミド(エクセグラン他)、トピラマート(トピナ他)が第一選択薬とされており、他にもバルプロ酸ナトリウム(デパケン他)、AMPA受容体拮抗薬ペランパネル(フィコンパ)などに加え、2016年8月からは成人患者を対象としたラコサミドの経口製剤(ビムパット錠)が臨床使用されている。ラコサミドの経口製剤は、2019年1月に4歳以上の小児に対する用法用量の追加承認を取得し、さらに3月11日には、錠剤の嚥下が困難な患者にも投与しやすいドライシロップ製剤(ビムパットドライシロップ10%)が発売された。

 ラコサミドは、既存の抗てんかん薬とは異なる作用機序を有する薬剤であり、電位依存性ナトリウムチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進することで、過興奮状態にある神経細胞膜を安定化させる。海外では、臨床的に重要な薬物相互作用が認められないこと、薬物動態プロファイル、服薬継続率などの観点からも多くの利点があると評価されている。同点滴静注製剤は、部分発作(二次性全般化発作を含む)を有する成人てんかん患者を対象とした国内第3相試験(経口剤から注射剤への切り替え試験)において、従来からの経口剤単独療法と比較して、その有効性に差異は認められなかった。

 既存の経口製剤を含むラコサミド全体の副作用として、浮動性めまい、頭痛、傾眠、振戦、眼振、嗜眠、異常行動、複視、霧視、白血球数減少、悪心、嘔吐、肝機能異常、食欲減退、疲労、注射部位紅斑(各3%以上)などがある。重大な副作用としては房室ブロック、徐脈、失神、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、薬剤性過敏症症候群、無顆粒球症を生じる可能性がある。

 なお、腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/分以下の重度および末期腎機能障害)、軽度または中等度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類AおよびB)では、1日最高用量を300mgとする。血液透析を受けている患者には、1日用量に加えて血液透析後に最大で1回用量の半量の追加投与を考慮する。