2019年3月1日、抗悪性腫瘍薬ダコミチニブ水和物(商品名ビジンプロ錠15mg、同錠45mg)が発売された。本薬は、1月8日に製造販売が承認、2月26日に薬価収載されていた。適応は「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能又は再発非小細胞肺癌」、用法用量は「1日1回45mgを経口投与。副作用発現時には、添付文書に記載のある基準を参考にして休薬、減量又は中止する」となっている。

 年齢別に見た肺癌の罹患率および死亡率は、ともに40歳代後半から増加し始め、高齢になるに従い増加する傾向にある。肺癌の死亡率の年次推移は、1960年代~1980年代に急激に増加し、1990年代後半以降は男女とも若干の減少傾向が認められるものの、現在も肺癌は悪性腫瘍による男性の死因の第1位となっている。罹患率と死亡率には大きな差がなく、肺癌患者の生存率の低さが課題となっている。

 肺癌の80%以上が非小細胞肺癌NSCLC)とされており、発見時には既に遠隔転移を来している症例も少なくない。NSCLCの化学療法は、従来よりプラチナ製剤(CDDP)を核とした併用療法が主流であったが、その後、癌細胞の増殖に関与する上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬EGFR-TKI)として、ゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、アファチニブ(ジオトリフ)、オシメルチニブ(タグリッソ)が臨床使用されるようになり、NSCLCのうちEGFR遺伝子変異のある患者の予後が改善してきた。

 ダコミチニブは、既存のゲフィチニブなどと同様のEGFR-TKIとして5番目の薬剤であり、EGFRおよびヒト上皮細胞増殖因子受容体(HER)2・HER4のチロシンキナーゼ活性を不可逆的に阻害する。ゲフィチニブと直接比較した国際共同第3相試験(対象:EGFR遺伝子変異[Exon19欠失及びL858R変異]陽性と診断されたNSCLC患者)において、有効性(ゲフィチニブ群を上回る無増悪生存期間の延長)と安全性が確認された。海外では、2019年1月現在、米国で承認されている。

 国際共同第3相試験において、96.9%に副作用が認められている。主なものは下痢(85.0%)、爪囲炎(61.7%)、口腔内潰瘍形成、アフタ性潰瘍などの口内炎(59.5%)、ざ瘡様皮膚炎(48.9%)、発疹・斑状丘疹状皮疹・紅斑性皮疹など(36.1%)などがあり、重大な副作用として間質性肺疾患、重度の下痢、重度の皮膚障害、肝機能障害が報告されている。

 なお、本薬の適応患者を選択するために、既存のEGFR-TKIと同様、EGFR遺伝子変異検査を実施することに留意する。