2019年1月8日、アルコール依存症治療薬ナルメフェン塩酸塩水和物(商品名セリンクロ錠10mg)の製造販売が承認された。適応は「アルコール依存症患者における飲酒量の低減」、用法用量は「成人、1回10mgを飲酒の1~2時間前に投与。ただし、1日1回までとし、症状により適宜増減するが1日量は20mgまで」となっている。

 アルコール依存症は、依存症症候群の一種で、慢性的に多量飲酒を繰り返すことで飲酒の欲求が高まり、飲酒行動のコントロールが困難となる疾患である。アルコールは肝障害やうつなど200以上の疾患の原因になるとされており、日常生活においても健康や仕事、家庭生活に重大な支障を来すなど、社会的・経済的な影響が大きいことが問題となっている。

 アルコール依存症の治療は、精神・身体合併症と離脱症状の治療を行う解毒治療と、専門の医療施設などでの心理社会的治療を中心としたリハビリ治療、そしてアフターケアとしての薬物療法(抗酒薬)を行うことによって断酒を達成し、継続することが原則である。現在、薬物療法では、抗酒薬としてシアナミド(シアナマイド)、ジスルフィラム(ノックビン)、断酒維持の補助としてアカンプロサート(レグテクト)が臨床使用されている。
 
 しかし、アルデヒドデヒドロゲナーゼを阻害する作用を持つ抗酒薬は、飲酒欲求そのものを軽減する薬剤ではないため、抗酒薬を使用した断酒治療を拒否・放棄する症例が多いことが臨床的に課題となっている。このことから最近の診断治療ガイドラインでは、最終的な治療目標(断酒の達成とその継続)は変わらないものの、中間的ステップとして飲酒量を低減させる治療を開始することで、最終的に断酒に導くことが治療目標の1つとして位置づけられるようになってきた。

 ナルメフェンは、オピオイド受容体のうち、μオピオイド受容体およびδオピオイド受容体に対しては拮抗薬として、κオピオイド受容体に対しては部分的作動薬として作用する、選択的オピオイド受容体調節薬である。この作用機序により飲酒欲求が抑制されると考えられており、これによって飲酒量の低減作用を発揮する飲酒量低減薬である。

 国内におけるアルコール依存症患者を対象とした、心理社会的治療と併用する第3相二重盲検比較試験(対照:プラセボ)とその後24週間の長期投与試験において、本薬の有効性が確認された。海外では、2018年11月現在、EU、オーストラリアなど世界40カ国以上で承認されている。

 国内における臨床試験から、副作用(臨床検査値異常を含む)が71.1%に認められている。主な副作用として、悪心(31.0%)、浮動性めまい(16.0%)、傾眠(12.7%)、頭痛(9.0%)、嘔吐(8.8%)、不眠症(6.9%)、倦怠感(6.7%)などが認められている。

 アルコール依存症治療の主体は心理社会的治療であることから、薬剤使用にあたっては、服薬遵守および飲酒量の低減を目的とした心理社会的治療と併用する。また、習慣的に多量(純アルコールとして1日平均60g超[男性]、40g[女性]を目安)飲酒する患者に対して使用することに留意する。緊急の治療を要するアルコール離脱症状を呈している患者では、離脱症状に対する治療が終了してから使用することとなっている。