2019年1月8日、チロシン水酸化酵素阻害薬メチロシン(商品名デムサーカプセル250mg)の製造販売が承認された。適応は「褐色細胞腫のカテコールアミン分泌過剰状態の改善」、用法用量は「成人及び12歳以上の小児では、1日500mgから投与を開始。効果不十分な場合は、経過を十分に観察して3日間以上の間隔をおいて1日250mg又は500mgずつ漸増し、患者の尿中カテコールアミン量及び症状の十分な観察のもと、適宜増減。1日最高用量は4000mg、1回最高用量は1000mg。投与間隔は4時間以上とし、1日500mgは1日2回、1日750mgは1日3回、1日1000mg以上は1日4回に分割」となっている。

 褐色細胞腫は、副腎髄質または副腎外傍神経節のクロム親和性細胞に由来し、カテコールアミンをはじめとする各種生理活性物質を生成・分泌する神経内分泌腫瘍である。罹患患者では、カテコールアミンの過剰分泌により、高血圧、頭痛、動悸、発汗、便秘など、多様な臨床症状を呈し、糖代謝異常や脂質代謝異常を合併する。このカテコールアミン分泌過剰状態が持続すると、心血管系臓器に障害を生じ、心血管関連事象のリスクが高まる。さらに、突発的なカテコールアミン大量放出が誘発されることで、発作性の血圧上昇(高血圧クリーゼ)から致死的な心血管事故が惹起される可能性がある。

 国内のガイドラインでは、褐色細胞腫治療の第一選択は手術療法であるが、確定診断後は周術期および非手術例の血圧管理と心血管系合併症の予防を目的として、α1遮断薬ドキサゾシン(カルデナリン他)などの交感神経遮断薬が使用されている。また、悪性褐色細胞患者の慢性的治療として、β遮断薬を含む交感神経遮断薬も使用されている。しかし、既存の薬剤は褐色細胞腫による血圧上昇をコントロールするのみで、褐色細胞腫そのものを治療する薬剤は国内では承認されていなかった。

 メチロシンは、カテコールアミン生合成の律速段階であるLチロシンからLドパへの変換を触媒するチロシン水酸化酵素を阻害することにより、褐色細胞腫からのカテコールアミン分泌過剰に伴う血圧上昇や頻脈などの諸症状を改善する薬剤である。

 日本内分泌学会および日本癌治療学会などから、本薬の早期開発・承認の要望が厚労省に提出されていた。「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で医療上の必要性が高い薬剤として評価された後、開発が進み今回の承認に至った。なお本薬は、2015年5月に希少疾病用医薬品に指定されていた。海外では、2019年1月現在、米国で承認されている。

 交感神経遮断薬での治療効果が不十分な褐色細胞腫患者(成人及び12歳以上の小児)を対象とした国内第1/2相試験では、メチロシンの有効性(カテコールアミン過剰分泌の改善)が確認された。

 国内臨床試験では副作用(臨床検査値異常を含む)が全症例に認められている。主なものは傾眠(81.3%)、鎮静、嘔吐、体重増加(各12.5%)などであり、重大な副作用としては鎮静、傾眠、精神障害、錐体外路障害、下痢、軟便、結晶尿を生じる可能性がある。

 薬剤使用に際しては、適応に関して「既存の交感神経遮断薬による治療で効果不十分な症例」および「外科手術前の処置、外科手術が適応とならない患者の管理、悪性褐色細胞腫の慢性的治療を目的とする症例」のいずれも満たす場合に使用すること、また用法用量に関して「原則として交感神経遮断薬と併用する」ことなど、使用上の注意事項があるので、事前に添付文書を熟読しておくことが肝要である。