2018年12月20日、抗HIV薬ドルテグラビルナトリウム/リルピビリン塩酸塩(商品名ジャルカ配合錠)が発売された。本薬は11月26日に製造販売が承認され、12月12日に薬価収載されていた。適応は「HIV-1感染症」、用法用量は「成人に1日1回1錠を食事中又は食直後に投与」となっている。

 ヒト免疫不全ウイルスHIV)は、主としてCD4陽性Tリンパ球とマクロファージ系の細胞に感染するレトロウイルスである。現在、全世界では新規HIV患者数が先進国を中心に減少傾向にあるが、日本では新規HIV感染患者数および後天性免疫不全症候群AIDS)患者数は横ばいの状況が続いており、臨床現場では早期発見や治療の管理などの重要性が増している。

 HIV感染症の病期は、急性感染期、無症候期、AIDS期に大別されている。急性期では発熱、発疹、リンパ節腫脹などの急性感染症状が発現し、その後、無症候期として患者自身の免疫機構とHIVが拮抗した状態が長期間続く。さらに、治療を開始しなければAIDS期としてHIV増殖が続くことで、患者の免疫力が徐々に低下し、日和見感染を併発しやすい状態に陥る。初感染からAIDS期に至るまでの期間は個々の症例で異なるものの、一般的には、抗HIV治療を行わない場合、AIDS発症後死亡に至るまでの期間は約2年程度と考えられている。

 現在、HIV治療では核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻害薬が臨床使用されている。現在、これらの薬剤を3〜4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が治療の標準となっている。

 ARTでは、HIVを抑制する効果がより強力な薬剤を「キードラッグ」、キードラッグを補足しウイルス抑制効果を高める役割を持つ薬剤を「バックボーン」と称し、キードラッグ1剤にNRTI 2剤をバックボーンとして併用する組み合わせが一般的となっている。しかし、治療の有効性を維持するためには長期服用が必要となるため、主にNRTIによる副作用の発現が治療を遂行する上で問題視されてきた。このことから臨床現場では、治癒遵守率の改善とQOL向上を達成するため、副作用発現が少なく、かつ長期服用を可能にする治療の簡素化が求められていた。

 ジャルカは、有効成分としてINSTIのドルテグラビル(DTG;テビケイ) とNNRTIのリルピビリン(RPV;エジュラント)の2成分を配合した薬剤である。INSTIとNNRTIのキードラッグのみ2剤併用レジメンであり、NRTIの長期服用による乳酸アシドーシスや骨密度低下、腎機能障害などの副作用発現リスクを軽減させることが可能である。さらに、1日1回1錠投与による服薬錠数の減少と、2剤のみの配合による錠剤サイズの小型化から、患者への負担軽減も期待されている。海外では、2017年11月に米国で、2018年5月に欧州で承認されている。

 ART(NRTI 2剤とINSTI、NNRTI、PIのいずれか1剤)によりウイルス学的に抑制されているHIV-1感染症患者を対象とした海外第3相試験(SWORD-1、SWORD-2)において、1日1回併用(DTG+RPV)療法が既存療法のARTに対して非劣性であることが確認された。

 海外第3相試験で副作用(臨床検査値異常を含む)が19%に認められている。主なものは頭痛、下痢(各2%以上)、不眠症、異常な夢、浮動性めまい、悪心、鼓腸(各1〜2%未満)などであり、重大な副作用として薬剤性過敏症症候群、肝機能障害、黄疸を生じる可能性がある。

 本薬はHIV-1感染症に対して1剤で治療を行うものであり、抗酸菌症であるマイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス(MAC)症の発症予防に用いられるリファブチン(ミコブティン)併用時を除き、他の抗HIV薬と併用しないことに注意する。また、リファブチン併用時には、リルピビリン製剤を1日1回25mg追加投与する。