2018年9月21日、抗悪性腫瘍薬アベマシクリブ(商品名ベージニオ錠50mg、同錠100mg、同錠150mg)の製造販売が承認された。適応は「ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」、用法用量は「内分泌療法薬との併用で、1回150mgを1日2回経口投与。患者の状態により適宜減量」となっている。

 世界的に女性の部位別罹患患者数が多い乳癌の治療では、外科的手術以外に薬物療法が行われており、アロマターゼ阻害薬レトロゾール(フェマーラ他)などの内分泌療法薬や、哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mammalian target of rapamycin:mTOR)阻害薬エベロリムス(アフィニトール)などの分子標的薬が臨床現場で用いられている。乳癌の多くはホルモン依存性腫瘍であり、その発生・増殖にエストロゲンが深く関与していることから、内分泌療法薬が治療の中心的薬剤に位置づけられている。

 乳癌のうち約20%は、悪性度が高い上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)ファミリーに属する受容体型チロシンキナーゼであるヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陽性とされている。近年、HER2陽性の乳癌に対しては、HER2の機能を抑制するトラスツズマブ(ハーセプチン)などのヒト化HER2モノクローナル抗体や、ラパチニブ(タイケルブ)のようなチロシンキナーゼ阻害薬といった、いわゆる抗HER2療法が用いられており、治療成績が向上している。

 HER2陰性症例では内分泌療法と化学療法が中心となっていたが、2017年12月から、サイクリン依存性キナーゼ(Cyclin Dependent Kinase:CDK)4および6に対して高い選択性を有するCDK4/6阻害薬パルボシクリブ(イブランス)を既存の内分泌療法と併用することで、治療効果の向上を図れるようになった。

 アベマシクリブはパルボシクリブと同じCDK4/6阻害薬であるが、3週間連日投与した後に1週間休薬するパルボシクリブとは異なり、休薬期間がなく連日投与する経口製剤である。CDK4/6は、80%以上の腫瘍で細胞周期の調節に重要な役割を果たしており、細胞増殖を引き起こすことが認められている。アベマシクリブは、CDK4/6とサイクリンDからなる複合体の活性を阻害することで、網膜芽細胞腫(Rb)蛋白のリン酸化を阻害して細胞周期の進行を停止させ、腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。

 ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の患者に対する第3相無為化比較試験(国際共同試験:MONARCH2試験[手術不能または再発乳癌患者で内分泌療法歴あり]、MONARCH3[手術不能または再発閉経後乳癌患者で内分泌療法歴なし])から、アベマシクリブを内分泌療法と併用した際の高い有効性が確認された。海外においては、米国で承認されている。

 副作用として、承認時までの臨床試験から、下痢・悪心・嘔吐・食欲減退・腹痛・脱毛症・疲労(各20%以上)などがあり、重大なものは肝機能障害、重度の下痢、好中球減少などの骨髄抑制、間質性肺疾患が報告されている。