2018年8月29日、持続性ソマトスタチンアナログ徐放性製剤パシレオチドパモ酸塩(商品名シグニフォーLAR筋注用キット10mg、同筋注用キット30mg)が発売された。

表1 シグニフォーLAR各規格の適応(*クリックで拡大します)

 適応は「外科的処置で効果不十分又は施行が困難なクッシング病」、用法用量は「成人、10mgを4週毎に臀部筋肉内に注射。なお、患者の状態により適宜増量できるが、最高用量は40mgまで」。シグニフォーは今年3月、クッシング病の適応を取得していたが、開始用量が10mgであるため、新たな規格の製剤の登場が待たれていた。なお、これまでシグニフォーは、20mg、40mg、60mg製剤が「外科的処置で効果不十分又は施行が困難な先端巨大症・下垂体性巨大症」の適応で使用されている。各規格の製剤の適応を表1に示した。

 クッシング病は、良性下垂体腫瘍からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の過剰分泌により副腎が刺激され、コルチゾールが過剰分泌される慢性的高コルチゾール血症を呈する疾患。高コレチゾール血症による特異的な臨床症状(体形変化や皮膚症状など)が認められる。さらに、長期にわたるコレチゾール分泌過剰は合併症の悪化のみならず、免疫機能低下による重篤な感染症や高血圧などの血管障害により、致死的になる可能性もある。

 クッシング病の治療では、第一選択としては下垂体腺腫の外科的切除術であり、外科的切除術が施行できない場合には放射線療法、薬物療法が選択される。

 薬物療法には、副腎皮質ステロイド合成阻害薬のミトタン(オペプリム)、トリロスタン(デソパン)、メチラポン(メトピロン)があるが、これらには下垂体腺腫の縮小効果や視床下部−下垂体―副腎皮質系の動態を正常に回復する作用はない。また、下垂体分泌障害の中でもクッシング病の原因であるACTH産生腫瘍にはソマトスタチン受容体(SSTR)の中でもSSTR5が強く関連すると考えられており、SSTR2に親和性の高いソマトスタチンアナログであるオクトレオチド(下垂体性巨人症などに使われる)ではクッシング病に対する効果は低く、SSTR5に高親和性を持つ薬剤が期待されてきた。

 パシレオチドは、シクロヘキサペプチド構造を有するソマトスタチンアナログ製剤であり、SSTRを介して、内因性ソマトスタチンと同様にACTHや成長ホルモン(GH)などの分泌を抑制する。パシレオチドはSSTRの複数のサブタイプに対する親和性が高く、ACTH過剰分泌に重要な役割を担うSSTR5にも親和性が高いことから、ACTHの分泌を抑制する作用が期待できる。

 日本人患者を含むクッシング病患者を対象とした無作為化二重盲検国際共同第3相臨床試験で、有効性と安全性が確認されている。

 クッシング病患者を対象とした国際共同臨床試験から副作用が93.3%認められている。主な副作用は高血糖(46.7%)、下痢(32.0%)、胆石症(31.3%)、糖尿病(20.7%)などであり、重大なものは高血糖、糖尿病の発症又は増悪、徐脈、QT延長、肝機能障害が報告されている。