2018年8月29日、抗HIV薬リルピビリン塩酸塩/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩/エムトリシタビン(商品名オデフシィ配合錠)が薬価収載された。適応は「HIV-1感染症」、用法用量は「成人及び12歳以上かつ35kg以上の小児では1日1回1錠を食事中又は食直後に投与」。

 HIVは主としてCD4陽性Tリンパ球とマクロファージ系の細胞に感染するレトロウイルスである。現在、全世界では先進国を中心に新規HIV患者数は減少傾向にあるが、日本では新規HIV感染患者数および後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者は横ばいの状況が続いており、臨床現場では早期発見や治療の管理などが重要となっている。

 HIV感染症の病期は、急性感染期、無症状期、AIDS期に大別されている。急性期では発熱、発疹、リンパ節腫脹などの急性感染症状が発現し、その後、無症状期として患者自身の免疫機構とHIVが拮抗した状態が長期間続く。さらに、治療を開始しなければAIDS期としてHIV増殖が続き、患者の免疫力が徐々に低下し、日和見感染を併発しやすい状態に陥る。初感染からAIDS期に至るまでは個々の症例で異なるものの、一般的に抗HIV治療を行われない場合には、AIDS発症後死亡に至るまでの期間は約2年程度と考えられている。

 HIV治療では核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻止薬が臨床使用されている。現在、これらの薬剤を3〜4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が治療の標準となっている。具体的に、ARTではHIVを抑制する効果がより強力な薬剤を「キードラッグ」、キードラッグを補足しウイルス抑制効果を高める役割を持つ薬剤を「バックボーン」と称し、バックボーンをNRTI 2剤とキードラッグ1剤とする組み合わせが一般的となっている。

 オデフシィは、NRTIとしてエムトリシタビン(FTC) 、テノホビル アラフェナミドフマル酸(TAF) とキードラックとしてNNRTIのリルピビリン(RPV)の3成分を配合した薬剤である。同有効成分を配合した製剤としては、2014年12月よりコムプレラ配合錠が臨床使用されていた

 オデフシィには、TAFが含有されているのに対して、コムプレラにはテノホビル ジソプロキシルフマル酸(TDF)が含有されている。TAFは、TDFと同じテノホビルのプロドラッグ製剤である。TDFよりも血漿中において安定であり、テノホビルに加水分解され、さらに活性代謝物テノホビル二リン酸を標的細胞内にて高濃度で産生することが可能となっている。ことのため、TDFの1/10程度の含有量で同等の抗HIV作用を有することが認められている。

 海外第3相試験で副作用(臨床検査値異常を含む)が6.3〜12.8%認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は不眠症、異常な夢、頭痛、下痢、鼓腸、悪心(各0.5%以上)などであり、重大な副作用として腎不全などの重度の腎機能障害、乳酸アシドーシスが生じる可能性がある。