2018年6月14日、抗HIV薬ラルテグラビルカリウム(商品名アイセントレス錠600mg)が発売された。同成分は、既に2008年7月より400mg製剤が臨床使用されている。適応は「HIV感染症」、用法用量は「必ず、他の抗HIV薬と併用し、成人に1日1回1200mg(600mg錠×2)を食事の有無にかかわらず投与」となっている。

 HIVは主にCD4陽性Tリンパ球とマクロファージ系の細胞に感染するレトロウイルスである。日本では新規HIV感染患者数および後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者は横ばいの状況が続いており、臨床現場では早期発見や治療の管理などが重要となっている。

 HIV感染症の病期は、急性感染期、無症状期、AIDS期に大別されている。急性期では発熱、発疹、リンパ節腫脹などの急性感染症状が発現し、その後、無症状期として患者自身の免疫機構とHIVが拮抗した状態が長期間続く。さらに、治療を開始しなければAIDS期としてHIV増殖が続き、患者の免疫力が徐々に低下し、日和見感染を併発しやすい状態に陥る。初感染からAIDS期に至るまでは個々で症例が異なるものの、抗HIV治療を行われない場合には、約2年でAIDS発症後死亡に至ると考えられている。

 現在、HIV治療では核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻止薬が臨床使用されている。現在、これらの薬剤を3〜4剤組み合わせて併用する抗レトロウイルス療法(ART)が標準治療となっている。HIV感染治療では生涯を通じて抗HIV薬の服用が必要なため、患者服薬負担の軽減などARTの簡便化が必要となっている。
 
 ラルテグラビル(RAL)の600mg製剤は、1日1回投与で既存の400mg製剤1日2回の有効性や安全性での非劣性が確認された薬剤である。バイオアベイラビリティの向上が確認された海外第1相臨床試験に続き、抗HIV薬治療経験のない18歳以上のHIV感染患者を対象とした海外第3相臨床試験(ONCEMRK)にて、RAL1200mg(600mg×2錠を1日1回)経口投与が既存のRAL800mg(400mgを1日2回)と同程度の安全性を示し、有効性においても非劣性であることが確認された。RAL600mg製剤は、2017年10月現在、米国をはじめとして世界34の国または地域で承認されている。

 海外第3相臨床試験では、2%以上認められた副作用は悪心(7.5%)、腹痛、頭痛(各3.0%)、下痢(2.4%)、嘔吐、浮動性めまい(各2.3%)など。重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群、薬剤性過敏症症候群、過敏症、横紋筋融解症、ミオパチー、腎不全、肝炎、胃炎、陰部ヘルペスが起こる可能性があるため注意する。

 薬剤使用に際しては、抗HIV 治療経験がないHIV 感染患者、あるいは400mg製剤を 1 日2 回(他の抗HIV 薬と併用)でウイルス学的抑制が得られているHIV 感染患者に使用すること、さらに薬物動態プロファイルが異なるため、1,200 mg 1 日1 回経口投与する際は、600 mg 錠×2 を用い、代替として400 mg 錠×3を用いないよう留意する。