2018年7月2日、抗トキソプラズマ原虫薬スピラマイシン(商品名スピラマイシン錠150万単位)の製造販売が承認された。適応は「先天性トキソプラズマ症の発症抑制」、用法用量は「妊婦に1回2錠(スピラマイシンとして300万国際単位)を1日3回経口投与」。

 トキソプラズマ症は、加熱不十分な食肉、飼い猫のトイレ掃除、園芸、砂場遊び、または洗浄不十分な野菜・果物を介して、トキソプラズマ原虫が口から体内に入ることで発症する。通常、健康な成人に感染しても、ほとんどの場合は症状が無く、約1割に風邪類似の症状が出現し、数週間で回復する。しかし、妊婦が初めて感染した場合には、トキソプラズマが胎盤を介して胎児に感染し、死産および流産だけでなく、胎児が重大な臨床症状(水頭症、網脈絡膜炎による視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害など)を生じる先天性トキソプラズマ症を発症する可能性がある。

 海外では、抗菌活性に加え、抗トキソプラズマ活性を有する16員環マクロライド系抗菌薬スピラマイシンが、妊婦のトキソプラズマ症に対して胎児への感染を減らし、重症度を軽減することが認められており、標準的治療薬として推奨されている。一方、日本ではトキソプラズマに関して適応を有する薬剤は無く、スピラマイシンの酢酸エステル製剤(アセチルスピラマイシン)が適応外で臨床使用されていた。

 以上のことから、2014年に日本産科婦人科学会からスピラマイシンの開発要望が提出され、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において医療上の必要性が高い薬剤として評価され、その後開発が進み今回の承認に至った。開発にあたっては、妊婦のトキソプラズマ症患者が極めて限られており、患者を対象とした国内臨床試験の実施が困難であることから、日本人および白人健康成人女性を対象に忍容性および安全性、薬物動態学的特徴を検討する国内第1相臨床試験が実施された。その結果、日本人と白人との間に臨床的な差異が無いことが確認されたことから、妊婦のトキソプラズマ症患者を対象とした臨床試験は行わず、海外のガイドラインや文献を踏まえて承認申請された。

 海外では2018年5月現在、世界70カ国以上で承認されている。日本では、2016年12月に希少疾病用医薬品に指定されている。

 海外で認められた主な副作用は、IgA血管炎、急性溶血、発疹、錯感覚、腹痛、肝機能検査異常などであり、重大な副作用はショック、アナフィラキシー、偽膜性大腸炎、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿疱症、QT延長、心室頻拍(torsades de pointesを含む)、心室細動、肝機能障害が報告されている。