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【新薬】イダルシズマブ(プリズバインド)
ダビガトランの抗凝固作用を中和する抗体製剤

2016/11/18
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)

 2016年11月18日、ダビガトラン特異的中和薬イダルシズマブ(商品名プリズバインド静注液2.5g)が薬価収載と同時に発売された。適応は「生命を脅かす出血または止血困難な出血の発現時、重大な出血が予想される緊急を要する手術または処置の施行時におけるダビガトランの抗凝固作用の中和」。用法用量として成人に1回5g(2.5g/50mL を2バイアル)を点滴静注または急速静注する。点滴で静注する場合は2.5g(1バイアル)につき5~10分かけて投与する。

 血栓・塞栓症の予防に対しては、ビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制するワルファリンなどの抗凝固薬が使用されている。しかし、ワルファリンは有効性が高いものの、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)を定期的にモニタリングし用量調節を行う必要があり、ビタミンK含有食品の摂取制限や感受性の個人差があった。このことから、2011年3月に食事制限やPT-INRの定期測定が不要となるダビガトランプラザキサ)が発売された。

 ダビガトランはトロンビンの活性部位に競合的かつ可逆的に結合することで、トロンビンの触媒反応を阻害する抗凝固薬である。ワルファリン服用中患者が出血した場合、ビタミンKを投与するなど抗凝固作用を中和する方法があるが、ダビガトランには直接中和する薬剤がなく、臨床現場では重篤な出血など、止血が必要な時の対応について懸念が生じているのが現状だ。

 イダルシズマブはダビガトランに対して特異的に結合し、抗凝固作用を中和するヒト化モノクローナル抗体フラグメント(Fab)である。また、ダビガトランの抗凝固作用の中和以外に凝固促進作用や抗凝固活性を示さず、血液凝固・線溶系に影響を及ぼさない。緊急処置を必要とする患者、もしくは生命を脅かす出血を発現している患者を対象とした国際共同第3相症例集積試験では、ダビガトランに対する中和効果が確認された。海外では米国や欧州をはじめとして、2016年8月までに世界12の国および地域で承認されている。

 日本人を含む国際共同第3相症例集積試験の中間集計では、5.3%に血小板減少症などの副作用が認められていることに注意する。重大な副作用としては、ショック、アナフィラキシーが報告されている。

 投与の際は、ダビガトランによる抗凝固作用が発現中と考えられる患者にのみ使用することを厳守しなければならない。また、イダルシズマブの投与により血栓症のリスクが増加することから、止血後は速やかに適切な抗凝固療法を考慮しなければならない。ダビガトランの投与はイダルシズマブ投与から24時間後に再開可能であり、他の抗凝固薬は投与後いつでも再開可能である。

 イダルシズマブは日本人での投与実績が少ないため、安全性と有効性の情報収集という観点から、発売後、一定数の症例が集積されるまで全症例を対象に使用成績を調査することが承認条件となっている。

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