日経メディカルのロゴ画像

第4回
「最初の一歩」がベストになるように
九州大学病院薬剤部の池末裕明氏に聞く

2010/02/12

──患者さんによって個人差もありますね。青色に塗られた時期以外でも副作用が見られることもあり得ます。

池末 そうですね。しかし安全を見込んで発生頻度が高い時期を長くとってしまうと、結局シートが全部青色になってしまいます。100%完璧を目指したシートにする必要はないと思っています。

 文献や学会発表、各種の医薬品情報を参考に、各薬剤ごとの副作用の発生時期や頻度をデータとして蓄積し、レジメンを組んだときに自動的にシートができるようプログラムを組んでいます。このプログラムを使って作ったワークシートに対し、過去の症例のデータをあてはめて検証したところ、8割の精度があることが確認できました。シートは「心構え」を持つために使うものですから、この精度でも許容できるレベルだと思っています。もちろん、継続して更新していますが。

 患者さんに服薬指導シートを使って説明したところ、「何となくイメージができるようになった」と言っていただく機会が多くなりました。例えば、私たちの説明にご家族が同席できなくても、このシートを見ながらご家族とお話ができたと言っていただいたこともあります。また、全てのレジメンには対応できていませんが、医師と患者さんの話の際に利用してもらったり、看護師もこれを見ながら患者さんの様子を看ていただく機会も増えています。

 また、ある患者さんのときには、シスプラチンを含むレジメンを他院で1クール受けた後に転院してこられたのですが、1日に5回以上吐いたそうでした。同じレジメンが継続されることになったため、医師と制吐療法を見直し、患者さんにも十分に説明しました。その結果、1回も吐くことなく、患者さんが「これなら続けて受けられそう」と仰ってくれました。嬉しかったですね。

──がん専門薬剤師の資格を取得されていますが、癌だけを担当することにはならないのでしょうか。

池末 置かれている環境によって異なると思います。勤務している医療機関にもよりますが、資格を取ったからと「私は癌患者さんだけしか担当しません」というのでは薬剤部は回らなくなってしまうでしょう。「がんセンターに勤務するがん専門薬剤師」というのは理想のモデルの1つです。しかし、それだけがこの資格の目的ではないと思っています。私自身で言うと、かかわる患者さんは癌患者さんが多いですが、他にもさまざまな疾患の患者さんを担当しています。

 ではなぜ資格を取得するのか? 1つの専門資格を取得するには勉強して一定の審査をクリアしなければなりません。自分をレベルアップさせるきっかけになりましすし、自分の中に「引き出し」を増やすことができる、と捉えています。薬剤師としての幅を広げるために資格取得という機会を生かすとも言えるでしょうね。1つの分野をじっくりと学ぶと、それは必ず他の分野に応用できますから。

 資格を取得すると、情報が集まるようになることもメリットです。何かあれば、あいつに相談してみよう、と声をかけていただく機会が増えますから。知識や経験を伝えることができるし、逆に私自身も勉強になります。もちろん私自身、他の得意分野を持っている同僚や他職種の方に相談することがあります。困ったときに相談できることに感謝していますし、そうしながら信頼関係を築いていくという側面もあるかも知れません。こうして他の薬剤師や職種の方々と連携していくことが今の医療において重要だと思っています。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ