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分子標的薬剤投与時の皮膚症状管理

2010/02/22
静岡県立静岡がんセンター 薬剤部 鈴木賢一

皮疹マネジメントに際し調剤薬局の薬剤師が知っておくべき注意点

・皮膚障害は分子標的薬剤の有害反応のひとつであるが、症状の重篤度が治療効果と相関する可能性も示唆されている11)。したがって、皮膚症状が発現しただけでは、原則的に分子標的薬剤を中止することはなく、むしろ積極的に症状緩和につとめ可能な限り服用を継続できるよう適切な薬剤選択のための支援が重要。

・症状によっては強力なステロイド外用剤を顔面や頭皮に使用することがある。ステロイド外用剤を顔面に塗布することに抵抗感があるかもしれないが、原則的には1-2週間程度強めの外用剤を使用し、症状が緩和された時点で強度のレベルを下げる方法が理想的である。処方された意図を十分確認し強力なステロイド外用剤という理由だけで、「顔にはなるべく塗らない方がよい」などと誤解を招かぬよう指導することが重要。

・皮膚乾燥により皮膚が荒れてくると外部からの刺激を受けやすくなるほか、保湿効果が薄れてくるため、掻痒などが起こりやすくなる。特に冬場は空気が乾燥するため、入浴後にハンドクリームなどで保湿を心がけることは効果的と考えられる。ただし市販品の中には刺激の強いものもあるので使用する薬剤に関しては注意を要する。

・皮膚障害は顔面、頭皮、前胸部など上半身から発現する傾向がある。背中など自身の目がとどかない部分は、ときどき家族などの協力を得て皮膚障害の有無を確認してもらうよう助言する。

・治療にはステロイド外用剤のみならず、抗ヒスタミン剤、抗菌剤などを組み合わせて使用する。特に塩酸ミノサイクリンは抗菌作用のほか抗炎症作用を目的とし処方されるため指導時には注意すべきと思われる10)

・患者が自分勝手にステロイド外用剤の使用回数を減らしたり使用範囲を狭めたりすることは、結果的に使用期間が長くなってしまう可能性があるので絶対にやめるよう指導する。

・ステロイド外用剤の基剤には、大きく分けて軟膏、クリーム、ローションの3つのタイ
プがあり、皮膚の乾燥状態や、びらんの有無などの症状に合わせて使い分けていく。

・乾燥している部分には保護・保湿効果も期待して軟膏基剤を、日常的に化粧品を使用される方の顔面にはべとつきの少ないクリーム剤を、びらんや皮膚亀裂がある場合には、溶液中のアルコールによる刺激を避けるためローション剤は避ける、などそれぞれの症状や生活仕様に合わせて使い分けることも可能な場合がある。処方内容が患者さんの症状や生活仕様に合わないと判断される場合には、基剤の変更など医師への提言を行う必要がある。

・分子標的薬剤は、従来の抗癌剤治療と異なり、使用回数や期間に制限はない。効果が持続している、あるいは病勢コントロールが維持されているのであれば原則的に服用を継続する。皮膚障害が原因となって服用を中止することのないよう、薬剤を上手に使用してコントロールできるよう治療を支援していくことが必要。

参考文献
1)コンセンサス癌治療 2002 Autumn 第1巻第3号(通巻第3号)P156
  2)Fukuoka M, et al : J Clin Oncol 27:15s, 2009
3)Lacouture ME: NATURE REVIEWS volume 6 october 2006; 812より引用
4)Rash Management 第2版 中外製薬 P11
5)宗廣明日香ほか:皮膚臨床50(10);1213-1216,2008
6)西岡 清ほか:皮膚科診療プラクティス、12スペシャリストとしての外用薬の使い方、 文光堂(東京)2002、P8
7)吉野孝之:大腸癌治療におけるセツキシマブ(アービタックス®)のすべて、メディカ ルレビュー社(東京)2009、P27
8)鈴木賢一:日本医療薬学会 札幌 2008 21-P2-289
9)大谷道輝:ステロイド軟膏剤の混合による臨床効果と副作用への影響の評価、医療薬 学、29:1-10、2003
10) Matsusima et al JPN.J.Antibiot.54(5),179-181(2001)
11) Wacker, B. et al. Clin Cancer Res 2007;13:3913–21

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