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癌の基礎知識
胃癌

2010/05/17
監修 大阪医科大学化学療法センター教授 瀧内比呂也氏

 もう一つのSPIRITS試験では、切除不能再発胃癌に対する新たな標準治療となったTS-1とTS-1+シスプラチンを比較した。無増悪生存期間は、奏効率54%のTS-1+シスプラチンが6.0カ月、30%のTS-1が4.0カ月だった(下図)。この2カ月の差がそのまま生存期間中央値の差となって表れ、TS-1+シスプラチンは13.0カ月、TS-1は11.0カ月で、シスプラチンの併用により有意に延長した(p=0.0366)。ハザード比は0.774だった。

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 この2つの試験結果から、日本ではTS-1+シスプラチンが進行胃癌の新たな標準治療のレジメンとして推奨されることとなった。

 欧米では進行胃癌に対し、TS-1+シスプラチンを5-FU+シスプラチンと比較するFLAGS試験が行われた。主要評価項目の全生存期間については、TS-1+シスプラチンの5-FU+シスプラチンに対する優越性は証明できなかったが(ハザード比0.92)、生存曲線が交差せず副作用も少なかったため、臨床的にはTS-1+シスプラチンが5-FU+シスプラチンに替わり得ることが示されたと考えられる。しかし、5-FUに対するTS-1の明らかな有効性が示されなかったため、米国でのTS-1の承認には至らなかった。

●治療―術後補助療法

 胃癌の術後補助化学療法について世界的に認知度が高い試験は、2001年に報告された米国のIntergroup study-0116(INT-0116試験)だ。手術単独群と術後に5-FU+ロイコボリンの投与および計45Gyの放射線を照射する化学放射線療法を行う群を比較している。対象の60%以上がT3以上で、85%にリンパ節転移を認めた。全生存期間、無再発生存期間ともに、明確に化学放射線療法群が有用性を示した(下図)。米国ではこのデータから、5-FU+ロイコボリンを用いる化学放射線療法が、胃癌の術後補助療法の標準と位置づけられた。

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 しかし、日本胃癌学会では、INT-0116試験の結果を日本の標準治療として受け入れることはできないとしている。その理由がリンパ節郭清範囲だ。INT-0116試験ではD0郭清(不完全な郭清のみ)が54%、D1郭清(1群リンパ節のみ)が36%で、日本で標準的なD2郭清はほとんど行われていない。再発形式をみても、化学放射線療法の効果は局所再発のみであり、遠隔転移の抑制には寄与していない。つまり、局所コントロールが不十分な部分を化学放射線療法で補うという形となっているわけだ。

 2010年のNCCNのガイドラインでは、術後補助療法として化学放射線療法と5-FU+シスプラチン+エピルビシンを推奨している。しかし、日本の「胃癌治療ガイドライン」(2004年)では「延命効果を指標として手術単独群を対象とした大規模臨床試験を早急に行うべきで、術後補助化学療法を日常診療とすることはできない」と書かれている。

 日本で行われた術後補助化学療法の臨床試験は細かい設定がなされている。JCOG8801試験では、漿膜浸潤陰性の胃癌に対し、手術単独群と術後に5-FU+テガフール・ウラシル配合剤(UFT)+マイトマイシンCによる化学療法を行う群を比較した。生存期間は化学療法群がやや上回ったが、サンプルサイズなどの問題から有意差は得られなかった。しかしサブ解析で、T2でリンパ節転移がある場合に有意差が得られる可能性が示唆された(下表)。

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