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癌の基礎知識
大腸癌

2010/04/26
監修 国立がんセンター東病院消化器内科 吉野孝之氏

 結腸癌、直腸癌ともに外科切除の術式は多く、深達度などによってリンパ節の郭清範囲が異なる。さらに、1990年代前半から腹腔鏡下手術が日本でも行われるようになった。また、肛門を温存できる内肛門括約筋切除術(ISR)など、QOLを考慮した術式も開発されている。

●切除不能・再発大腸癌に対する化学療法

 大腸癌の治療成績向上を図るうえで、5年生存率が低いステージIVの成績を上げることは重要だ。ステージIV大腸癌に対する化学療法の意義は、5-FUと支持療法(BSC)を比較した試験で初めて証明された。生存期間中央値はBSC 5カ月に対し、5-FUでは11カ月となり、5-FUの投与で有意に延長していた(p=0.006)。この結果は、1993年の「British Medical Journal(BMJ)」誌に掲載された。

 その後、大腸癌に有望な多くの薬剤が開発され、米国ではイリノテカンカペシタビンオキサリプラチンセツキシマブベバシズマブパニツムマブなどが承認された。日本では、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチンが承認された後、2007年にはカペシタビンとベバシズマブ、2008年にセツキシマブが承認され、2010年にパニツムマブが承認される。

 2005年には、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチンの3剤を使う割合が高かった試験ほど、患者の生存期間が延長したというメタアナリシスの結果が示されている。3剤を使い切った場合の生存期間は約21カ月だったが、その後、分子標的薬のベバシズマブとセツキシマブの導入により、25カ月を超えるところまで期待が持てるようになっている(下図)。

 日本で2007年4月に大腸癌に対して承認された初めての分子標的薬ベバシズマブは、血液中の血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)に結合することで受容体への結合を防ぎ、受容体との結合によって起こる血管の形成を妨げる働きを持っている。これによって、癌が栄養や酸素を得て増殖するのに必要な血管新生を抑制し、癌の増殖を抑える。また、癌組織特有の血圧が高くもろい血管の状態を緩和する作用もあるとみられている。

 ベバシズマブの有効性が最初に証明されたのは、ファーストライン治療として、5-FU+ロイコボリン+イリノテカンのIFL療法にベバシズマブを上乗せするかどうかで効果を比較したAVF2107g臨床試験だ。全生存期間はプラセボ群の15.6カ月に比べ、ベバシズマブ群で20.3カ月と、4.7カ月延長した。無増悪生存期間もプラセボ群より4.4カ月延長した(下図)。

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