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癌の基礎知識
腎細胞癌
治療の基本は手術による摘出 新規分子標的薬の登場で広がる転移性腎癌の治療選択肢

2009/06/11
(監修 静岡がんセンター院長 鳶巣賢一氏)


 同臨床試験では、テムシロリムスの有害事象としては、皮膚発赤、末梢浮腫、高血糖、高脂血症が見られた。ただし、これらの重篤な有害事象の発症割合はIFNα群が多く、副作用の面でもテムシロリムス群が優れていたという。テムシロリムスは、現在、国内では販売認可申請が出されている段階だ。

 国内では、結腸・直腸癌を対象としている血管新生阻害剤ベバシズマブも、海外ではIFNαとの併用が標準治療となっている。ベバシズマブの上乗せ効果は、転移性腎細胞癌を対象に行われたAVOREN試験の結果示された。AVORON試験には18カ国、101カ所の医療機関が参加し、IFNαにベバシズマブを併用する群、もしくは併用しない群を比較した。その結果、無増悪生存期間(PFS)が約2倍に延長された(下図)。

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●米国ではステージ4の淡明細胞癌のファーストラインは分子標的薬

 米国NCCNのガイドライン(v.1 2009)では、再発/切除不能のステージ4の淡明細胞癌のファーストラインとして、スニチニブ単独、もしくは、ベバシズマブ+IFN併用療法が、カテゴリー1で推奨されている。poor risk群に対してはテムシロリムスもカテゴリー1の推奨だ(下表)。また、セカンドラインでは、サイトカイン療法後のソラフェニブやスニチニブがカテゴリー1で推奨されている。

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 欧米に比べて、腎細胞癌を対象とする分子標的薬の承認が遅れていた我が国でも、2008年から分子標的薬2剤(スニチニブ、ソラフェニブ)が利用できるようになり、切除不能の腎細胞癌の治療選択肢が広がった。

 ただし、これらの新規分子標的薬(スニチニブ、ソラフェニブ)を、どのように治療に取り入れるかのコンセンサス形成には至っていないのが現状だ。

 日本人におけるこれら新規分子標的薬の副作用が、米国で発表された論文よりも重篤なことが多いこと、また、薬の値段が高いということ、そして、日本人では従来からのサイトカインによる生存期間が米国の成績より格段と良いこと、などの理由から、日本ではファーストラインとしてはインターフェロンを用い、インターフェロンの効果が期待できない状態になってから、分子標的薬に切り替える医師が多い。根治困難な状況で、患者が元気に過ごせる時間をいかに長く取ることができるかという視点から薬剤選択を考える医師が日本には多いことが影響しているためと考えられる。


国内における新規分子標的薬を組み入れた治療戦略のコンセンサス形成が今後の課題といえるだろう。

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