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癌の基礎知識
肺癌
-非小細胞肺癌の化学療法を中心に-

2009/04/27
監修 国立がんセンター東病院呼吸器内科医長 久保田馨氏

 日本でも、ほぼ同様のランダム化第II試験を行い、2008年11月、ベバシズマブの非小細胞肺癌に対する適応拡大申請が厚生労働省に提出された。ただし、ECOG4599試験では、血液毒性としてベバシズマブ併用により好中球減少が有意に増え、発熱性好中球減少も有意に増えるという結果であった。加えて、喀血や感染などによる治療関連死が、化学療法単独では0.5%であったのに比較して、ベバシズマブ追加では3.6%と高まっていた点は注意が必要だろう。

 一方、非喫煙者、非小細胞肺癌の一種である腺癌、アジア人では、ゲフィチニブの有効性が高いことが知られている。そのため、非喫煙者かつ腺癌を有するアジア人を対象にIPASS試験が、アジア9カ国で行われた。IPASS試験は、ファーストラインで、カルボプラチン+パクリタキセル(TC)をコントロールとして、ゲフィチニブ単独を比較する試験である。

 結果は、2008年9月に発表され、無増悪生存期間が交差する奇妙な曲線となった。上皮成長因子受容体遺伝子突然変異(EGRF mutation)を有する例では、TCに比較して、無増悪生存期間が明らかに良好であった。また、EGFR mutationを有さない例では逆にTC群が良好であった。全生存期間については、未だ観察が不十分である。EGFR mutationを有する例では、ゲフィチニブも標準治療の一つになり得ることが示されたといえる。Mutationを有さない例の無増悪生存期間は極めて不良であり、セカンドラインを含めてゲフィチニブの意義が少ないことが示唆される。

●化学放射線療法

 III期の非小細胞肺癌に対しては、現在Full doseのシスプラチンと胸部放射線の同時併用療法が標準治療で、長期の生存、根治も期待できる。ただし、シスプラチン、第3世代とのfull doseの化学療法と胸部放射線との同時併用は有害事象の発生が多いことから、実際には難しいという問題がある。

 我が国では、シスプラチン80mg/m2 day 1、ビノレルビン20mg/m2 day 1、8、4週毎に、放射線療法を同時併用するレジメンが一般診療ではよく利用されている。国立がんセンター東病院のデータでは2年生存率が44%と良好な結果が示されている(下図参照)。2008年のASCOでは、岡山グループから、化学放射線同時併用療法において、シスプラチン+ビンデシン+マイトマイシンとシスプラチン+ドセタキセルとを比較した試験結果が報告され、シスプラチン+ドセタキセル群が良好な成績であった。今後の標準治療になりうると考えられる。


(画像をクリックすると図表を拡大して表示します)

●術後補助化学療法

 完全切除された非小細胞肺癌に対し、シスプラチンを含む化学療法を術後補助化学療法として行うことで、生存率の改善効果があることが、2003年以降から示されるようになった。

 ただし、病期別に分けて、ⅠB期で明らかな有用性が示されているのはUFTだけであり、II期、IIIA期では、シスプラチンを含む化学療法の有用性が示されている。また、術後補助化学療法の検討が行われていない病期や抗癌剤もあり(下表参照)、今後、更なる検討が必要な分野となっている。

(画像をクリックすると図表を拡大して表示します)

●セカンドライン

 セカンドラインの化学療法は我が国では現在のところ、ドセタキセルが標準治療だ。その他、エルロチニブが、プラセボに比較して生存率を改善するという報告も出ており(下図参照)、新たな薬剤への期待が高まってきている。ちなみにエルロチニブは、2007年12月に非小細胞肺癌のセカンドラインとしての投与が承認された。我が国でのエルロチニブの第II相試験では、部分寛解(PR)が28%、安定状態(SD)が21%、病気進行(PD)が44%であった。エルロチニブに関してもEGFR mutationと治療効果の関係について更なる検討が必要である。

(画像をクリックすると図表を拡大して表示します)

 一方、エルロチニブに並んで注目されている分子標的薬のゲフィチニブでは、既治療例に対して、ゲフィチニブとドセタキセルを比較した非劣性試験(INTEREST試験)が海外で行われた。この非劣性試験とは、ゲフィチニブがドセタキセルに劣るという帰無仮説を否定できるかを調べたものである。その結果、ゲフィチニブのドセタキセルに対する非劣性が示された。すなわち、ゲフィチニブはドセタキセルに劣らないことが確認された。この結果を受け、今後欧米では、ゲフィチニブがセカンドライン、サードラインの治療薬の一つとなっていくと予想されている。

 ただし、国内で行われたほぼ同様のV-15-32試験では非劣性が証明されなかった。その理由は、試験終了後に受けた治療(後治療)の割合が異なったことも関係しているかもしれない。INTEREST試験では、ゲフィチニブ群の31%がドセタキセルを、ドセタキセル群の37%がゲフィチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を後治療として受けており、比較的バランスが良かった。一方、V-15-32試験では、ゲフィチニブ群の36%がドセタキセルを、ドセタキセル群の53%がゲフィチニブ群を後治療として受けていた。

 この他、様々な薬剤が肺癌の治療薬として登場してきている。ただし、肺癌の画期的な治療薬とはなっておらず、肺癌は依然、予後不良な癌だ。ただし、受動喫煙を含めた喫煙が肺癌の第一の原因であり、予防可能な疾患である。予防の大切さについて社会的認知を広げることが何よりも重要だろう。

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