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特別リポート:支持療法
免疫栄養療法の実力は?
がん免疫栄養療法研究会が症例検討会を開催

2012/09/01

写真13 東京都保健医療公社大久保病院外科の丸山道生氏

 東京都保健医療公社大久保病院の丸山道生氏は、根治不能と判定され無治療で放置されていた広範なリンパ節転移を伴う進行胃がん患者に対し、化学療法とともにEPA強化栄養剤とステロイドを投与、管理栄養士による指導を開始した。その結果、4カ月後にがんは部分奏効(PR)となり、体重、Hb、Alb、CRP、TTの改善がみられ、特に骨格筋量が増加したことから、EPA強化栄養剤を用いたがん免疫栄養療法は注目に値するとした。

 旭川医科大学の星智和氏は、経腸栄養とEPA強化栄養剤の併用により術前化学療法でPRが得られた、低栄養状態で炎症反応高度の高齢食道浸潤胃がん症例を紹介した。この患者の栄養療法開始前のCRP値は6.33mg/dL、Albは1.8g/dLであったが、3週間にわたるプロシュア480mL/日を含む経腸栄養により経口摂取可能となり、術前化学療法1コース終了時には普通食を摂りながらの外来治療へと移行できたという。術前化学療法時のEPA強化栄養剤の有用性を示唆するケースである。

 岐阜大学の田中善宏氏は、食道がんに対する有効な化学療法レジメンが増えたことを背景に、免疫栄養療法がもたらすベネフィットについてretrospectiveな検討を行った。対象は、2010年1月~2011年4月に術後再発し化学療法を施行した食道がん患者で、通常食にEPA強化栄養剤の飲用を加えた6例(EPA群)と免疫栄養療法未施行の6例(対照群)を比較した。その結果、EPA群は対照群に比べ有意に体重が増加、CRP値も有意差はないものの低下が大きく、化学療法の継続期間も数値的に優れていたとした。この成績から田中氏は、EPA強化栄養剤の飲用継続は再発リスクの高い食道がん患者における化学療法の忍容性を高め、その予後を改善する可能性があるという考えを示した。

患者QOLの向上を期待
 国立病院機構大阪南医療センターの濱卓至氏は、患者QOLの向上を目的とした新たな病期分類を考案するとともに、EPA強化栄養剤飲用を使用した各病期の症例についてその有効性を報告した。この新たな病期分類手法は3区分からなり、I期が積極的抗がん治療期、2期が進行再発・前悪液質期、3期が終末・悪液質期である。

 濱氏が紹介した3症例は、結腸がんの77歳男性、胃がん肺転移の72歳男性、結腸がんの68歳男性で、いずれも高炎症・低栄養状態であったことからEPA強化栄養剤(プロシュア)の10~14日間の飲用を実施したところ、3例ともに手術の施行が可能となったという。また、2期の胃がん術後に遠隔リンパ節再発を来した76歳男性は、EPA強化栄養剤の飲用とともに抗がん治療を継続中とのこと。

 2~3期の2症例は、症状緩和治療による食欲不振に対しプロシュアの飲用を勧めたところ、240mL/日ではあるが継続飲用により栄養状態の改善をみたとし、今後はEPA強化栄養剤によるQOL改善を評価したいとの抱負を述べた。

 前橋赤十字病院の田中俊行氏は、同院緩和外来患者30例、同時期に死亡した入院患者119例、退院・転院患者99例のCRP、Alb、GPS評価(cut-off値はCRP:0.5mg/dL、Alb:3.5g/dL)を比較し、死亡群は他の2群に比べCRP、Albともに有意な悪化を示していたこと、GPS分類のD群(CRP 0.5mg/dL超えかつAlb 3.5g/dL未満)が大半を占めていたことを報告した。田中氏は、経口摂取可能な状態からEPA強化栄養剤を投与する必要性を引き続き検討したいとした。

術後炎症の軽減に期待
 消化器がん患者に対する過度の手術侵襲がその予後を悪化させる。川崎医科大学の窪田寿子氏はこの現象をsurgical oncotaxisと称し、これは手術侵襲に伴い単球、マクロファージ、リンパ球等でNF-κBが核内に移行することにより産生された大量のサイトカインがもたらす現象で、がん細胞自身もNF-κBを活性化、サイトカインストーム下で着床能や増殖能を高める。この現象を起こさないためには、手術時のNF-κB核内移行を抑制する必要があると推定した。

写真14 川崎医科大学消化器外科の窪田寿子氏

 窪田氏は、まず、がん患者の手術時の侵襲反応を酸化ストレス、抗酸化力、サイトカインレベルで評価し、腫瘍組織におけるNF-κBの核内移行状況を解析することにした。対象は、2009年2月~2011年5月に同院にて手術を施行された食道がん20例と胃がん14例の合計34例である。酸化ストレスは血中ヒドロペルオキシド濃度で、抗酸化力は二価鉄イオン量で評価した。検討の結果、がん種および術式によって差異はあるものの、酸化ストレスは総じて手術開始から閉腹にかけて低下、第一病日以降第七病日にかけ経時的に上昇したのに対し、抗酸化力は一定の傾向を示さなかった。サイトカインレベルについては、血清IL-6濃度が手術後半から上昇し第三病日をピークに低下した。他方、NF-κBの核内移行陽性率(移行細胞が10%以上)は食道がんで69.2%、胃がんで66.7%であり、手術侵襲による酸化ストレスの亢進とサイトカインレベルの上昇、NF-κBの核内移行が高率に生じる状況が確認された。

 窪田氏は、NF-κBの活性化抑制作用を有するとされるEPA強化栄養剤を術前に投与することによるsurgical oncotaxisの抑制についても検討した。68歳男性でstage 3の再燃食道がん患者に対し、プロシュア480mL/日を術前2週間にわたり投与したところ、術後の酸化ストレスは術前レベルを超えることはなく、閉腹から第三病日にかけ上昇を示したものの、その後、再び低下した。このような成功例を経験したこともあり、窪田氏は、この術前栄養療法をNeoadjuvant Nutrition Therapy(NANT)と命名し、今後も検討を継続する意欲を表明した。

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