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特別リポート:支持療法
免疫栄養療法の実力は?
がん免疫栄養療法研究会が症例検討会を開催

2012/09/01

 腫瘍組織での炎症性サイトカインおよび接着分子の発現を大腸正常粘膜と比較すると、炎症性サイトカインのインターロイキン1β(IL-1β)はC群とD群で、IL-6およびCD44はD群で顕著な増加を示していた(図3)。IL-6およびToll-like受容体(TLR)を発現している好中球は、IL-6が増加するがん悪液質の状態では活性化され成熟化したまま長時間存在することになり、宿主免疫能に影響するとともに、爆発的に生じる突発的細胞死により内部から大量の炎症性メディエータやたんぱく質分解酵素を放出、手術部位感染などの合併症を招く。また、IL-6はアポトーシス抑制遺伝子であるBcl-3の発現をがん細胞に誘導し、抗がん剤の5-FUの抗腫瘍作用を減弱させ治療抵抗性を招くことから、がん悪液質の状態に陥った患者に抗がん治療が奏効しづらい原因はこれらにあると考えられる。

がん治療を支える免疫栄養療法
 がん細胞の多くはTLRを発現しており、これにIL-1βとLPSを添加した三木氏ら(文献3)の検討では、用量依存性にIL-6の産生量が増加、この系にIL-1β拮抗薬を投与するとIL-6の産生量が低下したことから、IL-1β-IL-6系を阻害する意義が示された。また、EPAやDHA由来成分であるResolvinについて、Schwabら(文献4)はTLRのシグナル伝達を阻害することを、Spiteら(文献5)は好中球の異常活性化やIL-6の産生能異常を正常化することを報告している。加えて、Resolvinには5-FUの副作用である耐糖能異常を改善する作用も存在することが示されている。実際、高度進行胃がんに対し5-FUによる術前化学療法にEPAとDHAを用いた免疫栄養療法を併用したところ、CRP値の有意な低下とAlb値の有意な上昇を得、がん悪液質は改善されたという。

写真3 ヒルトン名古屋銀扇の間は聴衆で埋まった

 以上の知見を踏まえて三木氏は、免疫栄養療法はがん治療における術前化学療法、術後補助療法のいずれにおいてもこれらの有効性を最大限に引き出し、感染症などの手術時合併症を予防する可能性を持つこと、末期のがん患者においてもQOLや日常生活動作(ADL)の向上に有効性が期待されることから、がん治療をシームレスに支える新たなアプローチであるとの見解を示した。

文献
1)Tan BHL & Feason KCH.; Current Opinion in Clinical Nutrition and Metabolic Care 2008; 11: 400-407
2)McMillan DC.; Proc Nutr Soc 2008; 67(3): 257-262
3)Miki C, et al.; Dig Dis Sci 2004; 49(6): 970-976
4)Schwab JM, et al.; Nature 2007; 447(7146): 869-874
5)Spite M, et al.; Nature 2009; 461(7268): 1287-1291

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