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連載◎和田耕治が解説する日本のCOVID-19
人流が増加に転じ、リバウンドの危険性上昇
第39回アドバイザリーボードが示す「今後の見通しと必要な対策」

2021/06/25

 2021年6月16日に開催された第39回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードがまとめた最新知見の中から、「今後の見通しと必要な対策」について解説します。

 アドバイザリーボードでは毎回、現時点における感染状況等の分析・評価について議論し、「直近の感染状況等の分析と評価」を更新しています。そこでは日本全体の感染状況について情報を共有し、地域ごとの動向を掘り下げたうえで、今後の見通しと必要な対策をまとめています。最近は変異株に関する分析も重点的に話し合っています。

 第39回アドバイザリーボードの資料全般については、動画を用意していますのでご覧ください(動画15分解説)。

 ここでは「今後の見通しと必要な対策」(表1)から、医療関係者が把握しておくべきポイントを示したいと思います。

表1 今後の見通しと必要な対策(2021年6月16日時点)

1)全国的に新規感染者数の減少傾向が続く可能性があるが、アルファ株及びデルタ株により、これまでより感染拡大が速く進むことが想定されることから、人流の増加の動きに留意が必要。すでに人流が増加傾向に転じた地域もあり、そうした地域では、新規感染者数の下げ止まりや、リバウンドが生じる可能性もある。

2)緊急事態措置区域及びまん延防止等重点措置(重点措置)区域では、市民や事業者の協力により、減少傾向が見られており、その効果は着実に表れている。ただし、沖縄では、依然としてステージIV相当の新規感染者数が発生している。医療提供体制は、病床使用率が高水準となっている地域もあるが、新規感染者数、療養者数の減少に伴い、全般的に負荷の低下は見られている。

3)リバウンドを防止するためにできるだけ新規感染者数を下げることと、下げ止まった場合も上昇の抑制を継続することが求められる。特に、東京では、依然として新規感染者数が15人を超える水準である中で、人流の増加が5週間継続しており、今後、特に若年層から新規感染者数のリバウンドが起こることが強く懸念される。また、今般の感染拡大を踏まえると、こうしたリバウンドを高齢者の感染につなげないことが重要。

4)ワクチンの接種が高齢者中心に進んでおり、高齢者の重症化が抑えられることが期待されるものの、デルタ株への置き換わりが進む可能性もあり、リバウンド後に感染者数の急速な増加が続けば、結果的に重症者数も増加し、医療のひっ迫につながる可能性もある。医療機関にはワクチン接種に伴う負荷もある。こうした点も踏まえ、職域接種なども含めワクチン接種の促進を図るとともに、感染の拡大を抑制するための必要な取組を今後も継続すべきである。

5)緊急事態措置や重点措置を解除していく場合には、これまで解除後速やかに人流の増加やリバウンドが起こった経験も踏まえ、対策の緩和は段階的に進めることが求められる。また、今後強化を含め、機動的な対処が重要。その際には、緊急事態措置及び重点措置の効果の分析も踏まえ、対応を検討していくことが求められる。さらに、各自治体で、地域の専門家の入った会議体などで人流や感染状況・医療提供体制などを分析し、感染拡大の予兆があれば、必要な対策をタイムリーに実施していくことが求められる。

6)一部の地域を除き、従来株から アルファ株へ概ね置き換わったと推定される中で、新たな変異株への対応も強化するため、ウイルスゲノムサーベイランスによる実態把握に重点をおいて対応を行うことが必要。特に、デルタ株等については、ゲノムサーベイランスやL452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、地域における検査も強化し、積極的疫学調査等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要。また、水際対策についても、引き続き迅速に対応することが必要。

7)感染後に遷延する症状(いわゆる後遺症)に関する研究の中間報告により、わが国においても一部の症状が遷延する場合があることが示されており、引き続き研究を進めるとともに、適時正確な情報を提供していくことが必要。

デルタ株の推移に着目

 1点目は、インドで初めて確認された変異ウイルスであるデルタ株の推移に着目している点です。デルタ株の性状については表2にまとめられています。従来株に比べて感染性が「高い可能性」があり、重篤度も「入院リスクが高い可能性」がある点が特徴です。また、ワクチンと抗体医薬の効果を弱める可能性も指摘されており、警戒が必要です。

 このため、デルタ株については、「ゲノムサーベイランスやL452R変異株スクリーニングにより全国的な監視体制を強化するとともに、地域における検査も強化し、積極的疫学調査等により、感染拡大を可能な限り抑えていくことが必要」とされました。

表2 デルタ株の性状について

 2点目は沖縄県と東京都の厳しい状況を指摘した点です。沖縄県は、6月20日までの緊急事態宣言が延長となりました。沖縄県は、依然としてステージIV相当の新規感染者数(対人口10万人当たり約62人)が発生しており、医療提供体制は、病床使用率が高水準となっている地域もあるからです。新規感染者数や療養者数の減少に伴って、全般的には医療への負荷の低下は見られているので、この状態が継続していくのか注視しなければなりません。

 一方の東京都については、依然として新規感染者数が対人口10万人当たり15人を超える水準にある中で、人流の増加が5週間継続しています。今後、特に若年層から新規感染者数のリバウンドが起こることが強く懸念される状況にあります。これからの2週、3週で新規感染者数の増加が厳しい状況になる可能性も見えています。東京都は緊急事態措置からまん延防止等重点措置に移行しましたが、人流増加を抑える対策を強化してリバウンドを起こさないようにしないといけません。

 3点目はリバウンドを起こさないための対策は、沖縄県や東京都に限らないという点です。各自治体では、地域の専門家の入った会議体などで人流や感染状況・医療提供体制などを分析していかなければなりません。その上で、感染拡大の予兆があれば、必要な対策をタイムリーに実施していくことが求められます。

 4点目は「いわゆる後遺症」に関する研究の中間報告が出たことです。「COVID-19 後遺障害に関する実態調査(中間集計報告)等」が第39回アドバイザリーボードの資料にありますから、こちらをご覧ください。

■連載の紹介
厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードの一員である和田耕治氏に、科学的な視点から見た「日本のCOVID-19対策の今」を解説していただきます。
■著者プロフィール
和田耕治(国際医療福祉大学大学院医学研究科・教授)●わだこうじ氏。2000年産業医科大学医学部卒業、臨床研修医、専属産業医を経て、カナダ国マギル大学産業保健学修士課程修了、ポストドクトラルフェロー。北里大学医学部衛生学公衆衛生学助教、その後講師、准教授を経て、2012年より国立国際医療研究センター国際医療協力局に勤務。2018年4月より現職。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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