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トピック◎日本でのVTEとCOVID-19の実態調査タスクフォース
日本のCOVID-19重症例、VTE発症が比較的高率

 日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症例でも、静脈血栓塞栓症(VTE)が比較的高率に見られることが明らかになった。日本静脈学会と肺塞栓症研究会による「日本でのVTEとCOVID-19の実態調査タスクフォース」が実施した多施設共同後ろ向き観察研究によるもので、2021年5月にCirculation Journal誌のオンライン版で発表された。

 研究対象は、タスクフォースに参加する22施設の中で、PCR検査によりCOVID-19と確定診断され、胸部を含む造影CT検査を実施された患者とした。

図1  COVID-19の重症度別で見たVTE発症率論文を基に作成)

 調査対象期間の2020年3月から10月までに把握されたCOVID-19症例は1236例で、そのうち造影CT検査が実施された症例は45例(3.6%)だった。45例の中で28例(62%)では、VTE発症を疑って造影CT撮像されていた。残りの症例は、別の目的で撮像されたものだった。

 45例のうちVTEを認めたのは10例で、発症率は22.2%だった。COVID-19の重症度別で見たところ、軽症例では0%、中等症例では11.8%、重症例では40.0%だった(図1)。

 また、VTE発症例は、非発症例と比較して、高体重(81.6 vs. 64.0 kg)でBMIも高く(26.9 vs. 23.2 kg/m2)、人工呼吸器やECMOを必要とするような重症例の割合が有意に高かった(80.0% vs. 34.3%)。一方、VTE発症例と非発症例では、退院時の生存割合には有意な差を認めなかった(80.0% vs. 88.6%)。

30%に治療用量の未分画ヘパリン

 研究グループは、抗凝固薬の投与実態も明らかにしている。それによると、COVID-19の45症例のうち30例(66.7%)に抗凝固薬が投与されていた。内訳は、46.7%が予防用量による未分画ヘパリン、30.0%が治療用量による未分画ヘパリン、13.3%が低分子ヘパリンだった。

 VTEを発症した10例の経過を見ると、入院からVTE診断までの日数(中央値)は18日で、50.0%の患者はICU入室中に、50%の患者は一般病棟入室中に、それぞれ診断されていた。8症例に肺塞栓症を認めたが、肺塞栓症の重症度としては全例が軽症例だった。

 研究グループは今回の研究の結果、以下の4点が明らかになったとまとめている。

(1) 日本の現在の実臨床では、COVID-19症例に造影CT検査が実施されることはかなり少数である。
(2) COVID-19の軽症例では、VTE発症は1例も認めなかったが、重症例ではVTE発症率は比較的高率だった。
(3) VTE発症例では、肥満やCOVID-19重症例の割合が多かった。
(4) VTE発症例と非発症例で、生存退院の割合には有意差を認めず、肺塞栓症の重症度としては全て軽症例だった。

 (1)については、「実際の現場では造影CT撮像は容易ではないことが示唆される」と理解を示しつつも、「経過からVTE発症を疑う症例では、適切に画像診断を実施することも重要」と考察している。

 また抗凝固療法については、「重症例では一定の発症リスクがある可能性が考えられたため、COVID-19重症度に加えて、個々の患者でのVTE発症リスクに応じて、抗凝固療法の実施を検討することが重要」と論じている。

 最後に、海外では予防的な抗凝固療法の実施に関して、適切な対象患者、抗凝固療法の種類と強度、投与期間などを検討する報告が相次いでいる、と指摘。「日本の現場でも、どのように対応すべきか議論を進めていくことが重要と考えられる」と結んでいる。

■参考文献
Incidence and Clinical Features of Venous Thromboembolism in Hospitalized Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) in Japan

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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