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学会トピック◎第70回米国心臓病学会学術集会(ACC.21)
ダパグリフロジンはCOVID-19の予後を改善せず
DARE-19試験の結果

米国Saint Luke's Mid America Heart InstituteのMikhail Kosiborod氏

 血糖コントロールや肥満の改善に加え心腎の臓器保護効果も持つSGLT2阻害薬ならば、心血管代謝系の危険因子を合併し重症化するリスクが高い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の予後を改善する可能性がある──。この仮説を検証するためダパグリフロジンを用いたDARE-19試験が行われたが、結果はネガティブだった。バーチャル開催された第70回米国心臓病学会学術集会(ACC.21、会期:5月15~17日)で、米国Saint Luke's Mid America Heart InstituteのMikhail Kosiborod氏らが報告した。

 COVID-19のパンデミック初期、高血圧や糖尿病、肥満など心血管代謝系危険因子がある患者は多臓器不全や死亡のリスクが高く、予後不良であると報告された。有効な治療法が手探り状態で模索される中、SGLT2阻害薬は2型糖尿病、心不全、慢性腎臓病(CKD)において臓器保護効果を認めること、またCOVID-19で生じるとされる血管内皮機能障害、慢性炎症や酸化ストレスの惹起、インスリン抵抗性の亢進などを改善する作用が知られていることから、心血管代謝系危険因子を持つ中等症COVID-19患者に対する、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンの有効性が検討された。

 DARE-19の対象は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染確認ないし感染疑いによる入院から4日以内の成人患者で、酸素(5L/分)投与下で経皮的酸素飽和度(SpO2)94%以上、胸部画像診断でCOVID-19に合致する所見を認める、心血管代謝系危険因子(高血圧、2型糖尿病、動脈硬化性心血管疾患、心不全、CKD[eGFR 25~60mL/分/1.73m2])が1つ以上ある場合とした。人工呼吸器管理が必要な重症患者、eGFR 25mL/分/1.73m2未満、1型糖尿病、糖尿病ケトアシドーシスの既往、以前からSGLT2阻害薬を服用している患者は除外した。

 2020年4月~2021年1月に、ブラジル、米国、メキシコ、インドなど7カ国(日本は含まず)の95施設から登録された1250例を、標準的なCOVID-19治療に加えダパグリフロジン(10mg/日)を上乗せする群(625例)またはプラセボを上乗せする群(625例)に、二重盲検下で無作為に割り付けた。被験薬の投与期間は30日間とした。

 主要評価項目は、重症化予防と患者回復の2つが設定された。前者に関しては30日後までの、(1)呼吸器イベントとして侵襲的/非侵襲的な機械換気の導入、(2)循環器イベントとして血管収縮薬投与、強心薬投与、心不全の発症/悪化、持続するVT/VF、心蘇生の実施、(3)腎イベントとして血清クレアチニンの2倍化または透析導入、(4)全ての死亡──の初回発生とした。後者は入院時と30日後の臨床状態の比較で、段階的に定義した重症度に基づいて階層的に比較するwin ratio法で検定した。

 患者背景は両群で同等で、ダパグリフロジン群では平均年齢61歳、女性比率42%、心血管代謝系危険因子の合併率は2型糖尿病50%、心不全7%、高血圧84%、動脈硬化性心血管疾患15%、CKD 7%だった。

 重症化予防(上述の呼吸器、循環器、腎の各イベントおよび総死亡)に関するエンドポイントは、ダパグリフロジン群70例(11.2%)、プラセボ群86例(13.8%)に発生、ダパグリフロジン群でリスクは20%抑制されたが、有意ではなかった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[95%CI]:0.58-1.10、P=0.168)。患者回復に関しても、両群で同等だった(win ratio:1.09、95%CI:0.97-1.22、P=0.14)。

 安全性に関して、全ての重篤な副作用はダパグリフロジン群65例、プラセボ群82例に発生したが、群間差は有意ではなかった。有害事象による投与中止はダパグリフロジン群44例、プラセボ群55例で、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)はダパグリフロジン群で糖尿病合併患者から2例発生した。

 Kosiborod氏は「2つの主要評価項目どちらも統計的な有意性は示せなかったが、呼吸器、循環器、腎の各イベントはダパグリフロジン群で少ない傾向にあった。COVID-19患者におけるダパグリフロジンの忍容性も確認できた」と結論した。

 試験開始時、COVID-19のような急性感染症に対するSGLT2阻害薬の投与は、急性腎障害(AKI)やケトアシドーシスのリスクを助長させるとして批判を浴びた。DARE-19では、入院中は酸塩基平衡や腎機能を毎日検査するプロトコールを組み、安全性の懸念払拭に努めた。

 Kosiborod氏は「適切な管理下にあれば、COVID-19患者でもSGLT2阻害薬の中断は不要であることを示した」と強調。その上で、心・肺・腎の臓器不全のリスクが減少傾向にあったことから、「急性疾患におけるSGLT2阻害薬の臓器保護効果について、さらなる検討が求められる」と指摘した。

 DARE-19はアストラゼネカの資金援助で行われた。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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