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NEWS◎レムデシビルとの併用で新型コロナウイルス肺炎を治療
JAK阻害薬バリシチニブが第3の新型コロナ治療薬として承認

 厚生労働省は2021年4月23日、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブ(商品名オルミエント)について、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)による肺炎に対する治療薬としての適応追加を承認した。同薬は開発元の日本イーライリリーが2020年12月に承認申請していた。国内で承認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬としては、抗ウイルス薬レムデシビル(ベクルリー)、ステロイド系抗炎症薬デキサメタゾン(デカドロンデキサート他)に続く3例目となる。

 低分子の分子標的薬であるJAK阻害薬は、炎症や免疫機能に関わるサイトカインの免疫活性化シグナル伝達において、重要な役割を果たすJAKを阻害する。JAKには4つのサブタイプ(JAK1、JAK2、JAK3、TYK2)があり、バリシチニブはJAK1およびJAK2活性を阻害する。これにより、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)のリン酸化および活性化を抑制してシグナル伝達を阻害し、免疫反応の過剰な活性化を抑制する。

 バリシチニブは2017年に、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)を適応として承認された(関連記事)。2020年12月には、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応が追加された(関連記事)。薬価は4mg錠が5274.90円、2mg錠が2705.90円。

 今回、バリシチニブに「SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)」の適応が追加された。用法用量としては成人に対して、レムデシビルとの併用において、バリシチニブ4mgを1日1回経口投与する。投与対象となるのは、酸素吸入、人工呼吸管理、または体外式膜型人工肺(ECMO)導入を要する患者で、入院下で投与を行う。総投与期間は14日間までとする。なお、2020年11月には米国食品医薬品局(FDA)が、酸素投与を必要とするCOVID-19患者に対するバリシチニブとレムデシビルの併用について、緊急使用許可を発令している。

 SARS-CoV-2による肺炎に対するバリシチニブの投与時には、やむを得ない場合を除き、抗凝固薬の投与などによる血栓塞栓予防を行う。中等度の腎機能障害のある患者には、2mgを1日1回経口投与する。重度の腎機能障害(15≦eGFR<30mL/分/1.73m2)がある患者に対して、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、添付文書の表を参考にeGFR(推定糸球体ろ過量)に応じて投与量を調整する。なお、レムデシビル以外の薬剤との併用については、有効性および安全性は確立していない。

回復までの期間を1日短縮

 SARS-CoV-2による肺炎に対するバリシチニブの有効性および安全性は、国際共同第3相臨床試験「ACTT-2試験」(N Engl J Med. 2021;384:795-807.)において確認された(関連記事)。同試験は、米国国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が主導し、2020年5~8月にかけて米国や日本など8カ国の67施設で実施したプラセボ対照二重盲検比較試験。

 対象患者は、SARS-CoV-2による感染症が示唆される症状で入院中の成人患者で、(1)肺炎画像所見、(2)SpO2(室内気)が94%以下、(3)酸素吸入を要する、(4)人工呼吸器管理またはECMOを要する──のうち少なくとも1つ以上が認められる、中等症もしくは重症の患者とした。

 主要評価項目は、回復までの期間の中央値とした。ここでの「回復」とは、8段階(完全な回復から死亡まで)で評価する順序尺度(ordinal scale、下記参照)において、1~3(活動に制限のない状態での退院から、酸素療法も治療も必要としない入院まで)に相当する状態になることと定義している。回復までの期間の中央値は、バリシチニブとレムデシビルの併用療法を行った患者群(併用群、515人)では7日(95%信頼区間[CI]:6-8日)で、レムデシビルおよびプラセボの投与を行った対照群(518人)での期間(8日、95%CI:7-9日)と比較して約1日短く、統計学的に有意な差が認められた(回復の率比[rate ratio for recovery]:1.16、95%CI:1.01-1.32、P=0.03)。

 副次評価項目として、投与開始から15日時点での患者の臨床状態を順序尺度を用いて比較した結果、対照群に対する併用群の臨床状態のオッズ比は1.3(95%CI:1.0-1.6)だった。登録時に高流量酸素療法または非侵襲的換気療法を受けている患者が、回復に至るまでの期間の中央値は、併用群で10日、対照群で18日だった(回復の率比:1.51、95%CI:1.10-2.08)。投与開始から28日後の死亡率は、併用療法群で5.1%、対照群で7.8%(ハザード比:0.65、95%CI:0.39-1.09)だった。

ACTT-2試験で使用した順序尺度(ordinal scale)

1. 入院しておらず活動も制限されない
2. 入院していないが活動が制限されるおよび/または在宅での酸素補充が必要
3. 入院しているが酸素補充は不要―治療の継続を必要としない
4. 入院しているが酸素補充は不要―治療の継続を必要とする(SARS-CoV-2感染症関連またはそれ以外)
5. 入院中で酸素吸入が必要
6. 入院中で非侵襲的人工呼吸または高流量酸素機器を使用している
7. 入院中で侵襲的人工呼吸またはECMOによる管理を行っている
8. 死亡

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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