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トピック◎COVID-19、「救命の可能性がより高い患者を優先」に96%が賛成
救命に必要な医療資源が枯渇したら誰を救うのか
「優先順位が低い患者の人工呼吸器を中止」は64.4%が支持

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が拡大するにつれ、医療現場では人工呼吸器や集中治療のベッド、集中治療のための人員など、救命に必要な医療資源が枯渇するリスクが高まっている。実際に人工呼吸器が枯渇した場合、現場の医療従事者はどのような判断をすればよいのか──。この問いに対する国民的な議論に役立てるための調査結果が2021年1月、CHEST誌のオンライン版に掲載された。

写真1  CHEST誌のオンライン版に掲載された論文

 調査は、東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県)の則末泰博氏らが実施した。期間は、日本におけるCOVID-19の第1波に当たる2020年4月から6月まで。対象は、東京都心から10km離れた330床の三次病院と横浜市中心部から30km離れた420床の三次病院の2つの地域病院。調査は、自記式質問紙を用いて調査を行った。並行して、現場の医療従事者を支援するために医療品やその他の物資を寄付した匿名企業5社(化粧品会社、電機メーカー、ホテル、エンターテイメント会社、製薬会社)に対しても、同様の調査を行った。なお、後者には、患者とその家族も含まれていた。

 パンデミック時の人工呼吸器配分に関する過去の研究や米国のガイドラインで用いられているトリアージ原則について、賛成および反対の程度を評価するための質問紙を作成。質問紙には4段階リッカート尺度を使い、回答者の個別優先順位付けの原則に関する見解を尋ねた。

 賛否を尋ねたのは、以下の5つの個別優先順位付けの原則。それぞれに対して、「強く賛成する」「賛成する」「反対する」「強く反対する」の4段階で評価してもらった。

(1)短期死亡率(救命できる可能性がより高い人が優先される)
(2)救命後の予後(救命後に一定期間以上生存する人を優先する)
(3)まだ少ない人生の段階しか経験していない人が優先される(より若い人が優先される)
(4)パンデミック下で感染のリスクを負って貢献していた医療従事者が優先される(貢献に報いて保証する)
(5)患者を個別化した優先順位付けを行わない(先着順)

 加えて、優先順位が高い患者に人工呼吸器を使用するため、優先順位が低い患者から人工呼吸器を取り外すこと(再配分のために使用中の人工呼吸器を中止すること)についても回答者の見解を尋ねた。

 その結果、配布した3191件の質問紙のうち、1520件から回答を得た。回答率は、病院勤務者で 49%(1756件中 854件)、非病院勤務者で 46%(1436件中666件)で、職業についての情報が不完全な21件の回答を除いた全体のアンケート回答率は48%だった。

 個別優先順位付けの原則については、「救命できる可能性がより高い患者が優先される」が最も支持された(回答者の95.8%が賛成、図1)。「救命後に一定期間以上生存する人が優先される」と「より若い人が優先される」に賛成は、それぞれ82.2%、80.1%だった。感染のリスクを負いながらパンデミックへの医療的な対応に貢献をしていた患者が優先されるという「貢献に報いて保証する」の原則には、75.3%が賛成だった。一方、「先着順」の原則に賛成した回答者は28.4%にとどまった。また、再配分のために人工呼吸器を中止することに対しては、64.4%が賛成した。

図1 個別優先順位付けの原則に対する賛否

 研究チームは今回の結果について、「パンデミックにより人工呼吸器が枯渇した場合における人工呼吸器の配分方法として、患者を個別化しない『先着順』ではなく、国際的に提唱されている患者を個別化したトリアージ原則(救命できる可能性がより高い患者が優先される)が日本の人々の間でも広く支持されていることが分かった」と結論。人工呼吸器を再配分するために優先順位が低い患者の人工呼吸器を中止することについても「多くの回答者が支持した」とし、「日本の国民は、救命に不可欠な医療資源をどのように公正にかつ透明性を保ちながら配分していくかという倫理的なジレンマと解決策について議論する準備ができている」と考察している。

■参考情報
Allocation of Mechanical Ventilators During a Pandemic: A Mixed-Methods Study of Perceptions among Japanese Health Care Workers and the General Public
救命に必要な医療資源が枯渇した場合について議論するために

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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