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1分解説◎新型コロナウイルス感染症対策分科会の緊急提言
感染拡大懸念で提示された5つのアクションとは

写真1 新型コロナウイルス感染症対策分科会の緊急提言

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策分科会は11月9日、今後、急速な感染拡大に至るリスクが高いとして、5つのアクションからなる緊急提言(写真1)を発表しました。これを受ける形で政府は11月10日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会議を開催し具体策を議論。終了後、本部長を務める内閣総理大臣の菅義偉氏は「クラスターの特徴に応じ、関係者が連携し効果的な対策や支援を講じるなど、今までよりも踏み込んだクラスター対応を実施する」などとコメントしました。

 緊急提言は冒頭、最近の感染状況について言及。クラスターの発生数が増加し、多様化しているとし、感染の「減少要因」を早急に強めなければ「急速な感染拡大に至る可能性が高い」との認識を示しました。

 その上で、医療提供体制への負荷を過大にしないためにも、「可及的速やかに感染を減少方向に向かわせる必要がある」とし、以下の5つのアクション(表1)を提言しました。

表1 新型コロナウイルス感染症対策分科会が示した5つのアクション
 アクション1 今までよりも踏み込んだクラスター対応
 アクション2 対話のある情報発信
 アクション3 店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践
 アクション4 国際的な人の往来の再開に伴う取り組みの強化
 アクション5 感染対策検証のための遺伝子解析の推進

 最初に挙げたのは、「今までよりも踏み込んだクラスター対策」でした。これまでの分析から、クラスターには「早期検知しにくいもの」と「閉じにくいもの」があると指摘。前者では一部の外国人コミュニティや大学生の課外活動など、若年層を中心としたクラスター例を挙げ、後者では接待を伴う飲食店でのクラスターを例示しました。

 今後のクラスター対策としては、接待を伴う飲食店、外国人コミュニティ、高等教育機関(大学、専門学校など)、職場などの対象ごとに、具体策を提示しました(表2)。

表2 それぞれのクラスターの特徴に応じた効果的かつ効率的な対策を行う(緊急提言から抜粋)

接待を伴う飲食店:具体的には、信頼関係に基づいたネットワークの構築や相談・検査体制の拡充などを地方都市の歓楽街も含めて迅速かつ確実に進めていく。
外国人コミュニティ:外国人コミュニティを支援し、多言語・やさしい日本語での情報の発信および伝達、相談体制を多元的なチャンネルで進めていく。そのために、各国大使館などとの連携や自治体による周知に加え、コミュニティとのネットワークや経験を有する国際交流協会やNPO、NGOなどと連携する。
高等教育機関(大学、専門学校等):大学などでは、授業そのものよりは、むしろ飲み会や寮生活、課外活動等でクラスターが発生している。感染防止と学修機会の確保の両立を図ることが極めて重要である。そのために、自治体は、域内の大学等の学生の相談を受けている健康管理センターなどと協力して、感染防止に関する啓発やクラスター感染が起きた場合の迅速な情報の共有を進め、さらに必要な場合に速やかに受診・検査につながる取り組みを進めていく。
職場:職場でも、仕事そのものよりは、むしろ仕事後の飲み会や喫煙などの休憩などでクラスターが発生していることから、事業者は産業医等と連携し、感染防止策を今まで以上に進める。特に、具合が悪い人が休めるようにすることやクラスターの発生が疑われた場合に迅速に保健所に協力する。

 また、早期探知がしにくいクラスターを把握するためには、「原因は明らかではないが、普段とは何か違う状況」を検知する「異常事象検知サーベイランス」が必要としています。

 このほか、感染者の発症日、クラスターの発生状況に関する最新の情報、クラスター対策の好事例について、自治体間及び国との間で情報共有する仕組みを作るべきとしました。

 2つ目のアクションは、「対話のある情報発信」です。これは、「3密や大声が感染リスクを高める」というメッセージや、感染リスクが高まる「5つの場面」「感染リスクを下げながら会食を楽しむ工夫」などといったメッセージが、国民に十分には伝わってこなかったとの反省から盛り込まれたものです。

 具体的な対策としては、(1)動画投稿サイトなどのSNSをはじめ、様々な媒体も活用しながら、特に若年層や忘年会・新年会を含めた飲み会などの参加者に興味を持ってもらえる方法で伝える、(2)メッセージの受け手の気持ちや受け止め方を理解した上で情報発信し、その効果や影響を確認して次の発信に役立てる、の2つを挙げました。

外国人を受け入れる医療機関への支援強化を

 3つ目のアクションは、「店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践」です。ここでは、業種別ガイドラインを現場で確実に実践することや、その際に自治体や地元の商店街・組合などが連携することを求めました。また、冬場の寒冷地における感染防止策のために、二酸化炭素濃度をモニターするなどの具体的な指針を示すことを挙げました。 

 4つ目は「国際的な人の往来の再開に伴う取り組みの強化」です。ここでは、(1)水際対策と地域での感染対策を連携して行うため、国が検疫所における滞在国・地域別検疫実施人数および検査実施人数やその中の陽性者数などの情報を迅速に整理して公表し、自治体に検疫関連の情報を迅速に提供すること、(2)国において、自治体での外国人のフォローアップを支援できる仕組みを早急に検討し、また検疫時に健康監視などに関する基本的な情報を多言語化して情報提供すること、(3)外国人を受け入れる医療機関などに対する支援を強化すること──の3点を求めました。

 最後の5つ目は「感染対策検証のための遺伝子解析の推進」です。ここでは、ウイルスの遺伝子配列を調べることは、クラスターの由来を明確にするためのみならず、感染対策を検証するためにも有効であると指摘。(1)地方衛生研究所を通じて国立感染症研究所に検体を着実に送付すること、(2)または、地方衛生研究所で遺伝子配列の情報を解析したうえで国立感染症研究所に結果を共有すること、(3)その際には実地疫学情報も共有すること──の3点を挙げました。

 緊急提言は最後に、これまで分科会が提言してきた年末年始の休暇分散、小規模分散型旅行の推進、保健所機能および医療提供体制の強化の推進は「必須」と訴えました。また、今回求めた5つのアクションを実施しても、感染拡大が続くようならば、「社会経済活動に一定の制約を求めるような強い対策を行う必要がある」との認識を示し、そうならないようにするためにも「国民が一丸となって対策を進めていく必要がある」と結んでいます。

 なお政府は11月10日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会議(写真2)を開催し、緊急提言を踏まえた具体策を議論。終了後、内閣総理大臣の菅氏は、各大臣に対して、引き続き感染拡大の防止と社会経済活動の両立に向け、緊急提言を踏まえた対策に全力であたるよう指示しました。

写真2 11月10日に開催された新型コロナウイルス感染症対策本部の会議(出典:首相官邸ホームページ

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連載の紹介

シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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