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解説◎新型コロナウイルス感染症・診療の手引き・第3版
COVID-19臨床像拡充、中等症の治療修正
後遺症と小児例の特徴を新設、COVIREGI-JPのデータを反映

 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は9月4日、『COVID-19診療の手引き』の第3版を発表しました。7月17日に公表した第2.2版を改訂したもので、この間に積みあがった知見を反映させています。前回からの変更点を中心に、4つのポイントをまとめました。

▼ポイント1
COVID-19の臨床像を大幅に拡充

写真1 『新型コロナウイルス感染症・診療の手引き・第3版』

 今改訂の目玉は、COVID-19の臨床像が大幅に充実された点です。前回は「病原体」と同じ章の中で論じられていましたが、今回は独立した章となり、「症状の遷延(いわゆる後遺症)」や「小児例の特徴」を新設するなど内容が拡充されました。

 特に目を引くのは、日本国内のレジストリであるCOVIREGI-JP(COVID-19 REGISTRY JAPAN)のデータに裏打ちされた記述です。COVIREGI-JPは、国立国際医療研究センターが主導する国内のレジストリ研究で、登録対象は、COVID-19と診断され医療機関において入院管理されている症例です。3月に登録が始まり、8月3日時点で全国748施設から4797例が登録済み。同時点の検査陽性者は3万8947人で、全体の12.3%を占めています(関連記事)。

 今改訂では2600例の中間解析結果をもとに、日本のCOVID-19入院患者の特徴を記しています。それによると、入院までの中央値は7日で、頻度が高い症状は発熱、咳嗽、倦怠感、呼吸苦でした。下痢は約1割でみられました。味覚障害(17.1%)と嗅覚障害(15.1%)については、海外報告より頻度が低い傾向にあることが指摘されています。

 臨床像の「重症化のリスク因子」の項目でも、COVIREGI-JPの知見を紹介しています。日本でのCOVID-19入院例では、うっ血性心不全、末梢動脈疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、軽度糖尿病がある場合、全体の傾向に比べて中等症や重症に占める割合が高いことから、「重症化のリスク因子の可能性が高い」としています。

 なお、重症化のリスク因子の項では「妊婦の重症化リスク」も取り上げています。結論は「現時点では、妊婦とCOVID-19の重症化との関連ははっきりしていない」でした。

 「合併症」については項目の整理が進み、呼吸不全、心血管系、血栓塞栓症、炎症性合併症が取り上げられています。

▼ポイント2
後遺症と小児例の特徴を追加

 診療の手引き第3版で新たに加わったのが、「症状の遷延(いわゆる後遺症)」と「小児例の特徴」です。前者では、イタリアからの報告(関連記事)を取り上げ、COVID-19から回復した後、具体的には発症から平均2カ月後も87%の患者が何らかの症状を訴えている点に注目しています。

 また、米国の電話調査の報告も紹介しています。この調査は、COVID-19と診断された270人のうち175人(65%)が検査日から7日(中央値)で普段の健康状態に復帰したものの、95人(35%)は検査から2~3週間経過後も「普段の健康状態に戻っていない」ことを明らかにしました。基礎疾患のない18~34歳でも、19%が普段の健康状態に戻っていなかった点を注視しています。

 もう一つの新設項目である「小児例の特徴」は、日本小児科学会の協力で実現したものです。まず、以下のように総括しています。

 COVID-19小児例は、成人例に比較して症例数が少なく、また無症状/軽症者が多い。しかし、無症状/軽症者であってもPCR法などで検出されるウイルスゲノム量は有症状者と同様に多く、呼吸器由来検体のみならず便中への排泄も長期間認められることが報告されている。

 その上で、「小児の重症度」「家族内感染率」「小児の定期予防接種実施状況」「小児の川崎病に類似した症状との関連」の4項目について論じています。

 注目は、予防接種の実施が滞っている点を危惧していることです。診療の手引き第3版では、WHOの調査でCOVID-19の流行後に64%の国において定期予防接種の混乱や一時中断が確認されたと指摘。国内でも予防接種件数の低下が明らかになっているとし、特に年長児や思春期小児を対象とするワクチンで減少幅が顕著であった点に懸念を示しています。なぜでしょうか。一部のワクチンで防げる疾患(Vaccine Preventable Diseases:VPD)は、年長児以降に罹患した場合、重篤な症状や後遺症を認めることがあるからです。

 対策としては「COVID-19流行下でも、すべての年齢において推奨される予防接種スケジュールを遵守することの意義」を強調。保護者に対しては、電話などで事前にかかりつけ医と相談し、たとえ定期接種時期を超えた場合であっても特例として接種を認める地方自治体があることから、居住地域の保健所に相談するよう求めています。

 小児の川崎病に類似した症状との関連では、英国、イタリア、米国、フランスなどから、複数の臓器に炎症を認める小児多臓器炎症症候群(MIS-C)の中に、川崎病に類似した例が見られたという報告が相次いだと紹介。(1)10歳代を含む年長児に多い、(2)アフリカ系やヒスパニック系が多い、(3)アジア系は5%以下と少ない、などの共通した特徴があったとしています。

 同様の報告は「アジア圏からはない」とした上で、診療の手引き第3版では、「現時点では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染に伴う川崎病類似の症状は、典型的な川崎病とは異なる病態であろうと考えられている」とまとめています。ただし、「今後日本でもCOVID-19小児例の増加に伴い、同様の現象が発生しないか十分に注視していく必要がある」と念を押しています。

▼ポイント3
中等症のマネジメントを修正

 今改訂では「重症度分類とマネジメント」の章で、最近有効性が確立したレムデシビルとデキサメタゾンの使用を中心に修正が加えられました。

 重症度分類の「中等症II 呼吸不全あり」の症例においては、「酸素マスクによるO2投与でもSpO2≧93%を維持できなくなった場合、ステロイド薬(薬物療法で取り上げられているのはデキサメタゾン)やレムデシビルなどの効果をみつつ、人工呼吸への移行を考慮する」とされました。

▼ポイント4
エアロゾル感染を追記

 前回の「病原体・臨床像」から「病原体・疫学」に変更された章では、伝播様式の中に新たに「エアロゾル感染」が追記されました(関連記事)。

 「エアロゾル感染は厳密な定義がない状況にあるが」と前置きし、以下のように記述しています。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は密閉された空間において短距離でのエアロゾル感染を示唆する報告がある。(中略)患者病室などの空間から培養可能なウイルスが検出されたとの報告がある一方、空気予防策なしに診療を行った医療従事者への二次感染がなかったとする報告もある。また、再生産数が2.5程度と麻疹など他のエアロゾル感染する疾患と比較して低いことなどから、現在の流行における主な感染経路であるとは評価されていない。

 その上で、医療機関に対しては、「少なくともエアロゾルを発生する処置が行われる場合には、空気予防策が推奨される」とまとめています。

■参考情報
新型コロナウイルス感染症・診療の手引き・第3版(厚生労働省)

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