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トピック◎東大病院、COVID-19集中治療例の治療結果を発表
ナファモスタットとファビピラビルで症状軽快
COVID-19重症例の11人中9人がICU退室、うち7人は退院

写真1 Critical Care誌のオンライン版に掲載された論文

 東京大学医学部附属病院の研究チームは7月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集中治療例に対して行ったナファモスタットとファビピラビルの併用療法により、11例中10例において臨床症状が軽快したと発表した。7月3日にCritical Care誌のオンライン版に掲載された論文によると、多くの重症例が軽快したのは、ナファモスタットの単独効果とファビピラビルとの併用効果の両方が考えられるとし、今後の臨床研究の必要性を示唆する結果と結論している。

 東京大学医学部附属病院救急科教授の森村尚登氏らの研究グループは、肺炎を発症し集中治療室での治療を必要とした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性患者を対象に、ナファモスタットメシル酸塩ファビピラビルの併用療法を行った。対象患者は4月6日から21日に入院した患者11人で、この2剤による治療は例外的に未承認薬の人道的使用を認めるコンパッショネート制度のもとで実施した。

 患者背景は、年齢が68歳(中央値、60-69歳)で、男性が10人(91%)。基礎疾患は、高血圧が4例、糖尿病が3例、COPDと癌が1例ずつに認めた。発症から入院までの期間は8日(中央値、7-11日)で、症状は9例に発熱、5例に咳、8例に呼吸困難が見られた。肺のCT像は、浸潤影が6例、すりガラス影が10例、肺浸潤が2例に認めた。全員が酸素療法を必要とし、8例が人工呼吸器の装着を、このうち3例はECMOの使用に至った。全ての患者は、少なくとも33日間、フォローアップされている。

 患者には、ナファモスタット0.2mg/体重kg/時を点滴静注し、14日間(中央値)投与した。また、ファビピラビルは初日に3600mg/日、2日目から1600mg/日を、14日間(中央値)投与した。治療9日目に高カリウム血症を発症した1例を除き、副作用による治療の中断はなかった。

 5月22日の時点のまとめで、1例がICU入室7日目に死亡したが、この1例を含む人工呼吸器を必要とした8例中7例は抜管できるまでに回復した。人工呼吸器の装着期間は16日(中央値、10-19日)だった。9人がICUを退室し、そのうち7人が退院している(図1)。

図1 11例の臨床経過(参考文献1)を基に編集部で作成)

 研究グループは、死亡割合が11例中1例(9%)と海外からの報告(30~50%)に比べて低かったことを踏まえ、SARS-CoV-2抑制に対するナファモスタットとファビピラビルのそれぞれの異なる作用機序と、ナファモスタットにある抗凝固作用の有効性が示唆されると考察した(注)。なお、ファビピラビルの単独効果については、国内の臨床研究の結果が現時点で報告されていないため評価には慎重を要すると指摘。ナファモスタットについては、単独効果とファビピラビルとの併用効果の両方が考えられるとした。その上で、「今後の臨床研究の必要性を示唆する結果」とまとめている。


(注)ナファモスタットは、国内で抗凝固薬や膵炎治療薬として使われてきた薬剤。ファビピラビルはRNAポリメラーゼを抑制することでSARS-CoV-2のヒト細胞内での増殖を抑制すると見られている。両者はウイルスの増殖過程における作用部位が異なることから、併用することで相加的な効果が期待されている。また、COVID-19の一部の患者では、血管内での病的な血栓の形成が病気の悪化に関与していると考えられており、ナファモスタットが持つ抗凝固作用が有効であると期待されている。

■参考文献
1) Nafamostat mesylate treatment in combination with favipiravir for patients critically ill with Covid-19: a case series. Critical Care volume 24, Article number: 392 (2020)


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