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トピック◎COVID-19の第2波に備えよ
あなたのN95マスクは大丈夫ですか?
不良品を見分ける5つのポイント

 一般社団法人の職業感染制御研究会が、KN95マスクなどの中国製品に不良品が多数確認されていると注意喚起したのが4月下旬。その後も、N95相当マスクで性能が不確かなものが国内に流通していたため、5月末には「KN95等の不良品マスクを見分ける方法について」を公表するに至った。同研究会副理事長の吉川徹氏に、今、医療現場で何が必要なのかを聞いた。

中国製のN95相当マスクに不良品

職業感染制御研究会の吉川徹氏

── 日経メディカルが2月に行った調査で、日本でも医療用マスク不足が表面化しました(関連記事)。スピード感をもって進めたはずの政府の対応は事態収拾に追いつかず、米国が緊急使用許可(EUA)を出した規格外製品を追認し、例外的にN95マスクの再利用を認める(関連記事)などの対応をとらざるを得ませんでした。そんな中、4月に入って、職業感染制御研究会からN95マスクを念頭に置いた注意喚起が発せられました。

吉川 呼吸用防護具製品のうち、特にN95相当マスクで適正使用が十分でない状況にあることが明らかになったからです。これではCOVID-19感染から医療者を守れないという危機感から、関係する研究会や学会などと相談し、注意喚起を行いました。

── N95相当マスクで適正使用が十分でないというのは、具体的にどんな状況だったのでしょう。

吉川 例えば4月10日に、米国の労働安全衛生研究所(NIOSH)は、N95相当マスクの製品評価の結果をウェブで公開しました。また、5月7日には、米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可(EUA)を発行した製品リストを修正しました。その際、NIOSHが実施した試験で、中国で製造された「KN95マスク」(中国のマスク規格)の多くが微粒子ろ過効率の95%以上を実証できず、リストから削除となりました。さらに、中国生産品の中に、オリジナルの規格認可品の模造品があることを指摘しました。オリジナル製品の企業とは異なる製造元が作った規格外のコピー商品が米国内に出回っていたことは、米国の関係者に大きな衝撃を与えました。

── こうしたN95相当マスクの不良品は、日本国内でも流通しているのでしょうか。

吉川 流通していました。職業感染制御研究会などに寄せられた情報では、自治体から配布されたり、厚意で寄付されたりした中国製品のKN95マスクの中に不良品が多数あることが判明しました。そのため4月下旬に、米国NIOSHの情報を紹介しながら、N95などの中国製品の不良品が多数あるとの注意喚起を行いました。

不良品を見分ける5つの方法

写真1 職業感染制御研究会などが発表した「新型コロナウイルス感染症対応における呼吸用防護具製品の適正使用に関する注意喚起」

── 最近も、職業感染制御研究会は6月12日付で、日本環境感染学会やフィットテスト研究会感染部会・産業部会との連名で、「新型コロナウイルス感染症対応における呼吸用防護具製品の適正使用に関する注意喚起」を発表しました(写真1)。

吉川 まず、N95マスクなどの備蓄在庫品の使用についての注意点をまとめました。それから、依然として性能の不確かなマスク、規格品をうたった規格外製品などが流通していましたので、その実態と対応についてまとめました。

── 備蓄在庫品における注意点をお話しください。

吉川 日本では、3月に入ってからN95マスクが不足する事態となりました。そのため、長期間備蓄保管していたN95マスク(米国N95規格の呼吸用防護具またはN95レスピレーター)がCOVID-19対応として使用されることになったのです。寄付されたものも含みます。今後も備蓄品を使う場面が多くなると考えられるので、備蓄在庫品を使うに当たっての基本的な注意点をまとめました。まず、使用期限を確認する必要があります。同時に、保管場所の年間を通しての温度条件も確認する必要もあります。使用期限が切れていたり、保管状況が悪かったりすると、N95マスクのフィルター性能が悪くなり、合成ゴムなどしめひもが劣化している可能性があるからです。

── 使用期限内であってもフィルターの性能は確認すべきでしょうか。

吉川 保管条件によってはフィルター性能が落ちている可能性もありますので、実際に装着して漏れ率が高くないか、自主的に確認した方がいいと思います。公的機関や任意団体などが、長期間保管していたものを医療機関に提供する場合も同様です。

── フィルター性能を評価するにはどうしたらいいですか。

吉川 簡易的には、定量式フィットテスト機器で確認できます。ただ、こうした専門機器を備えている医療施設は限られていますので、専門業者から機器をレンタルして利用するなど工夫が必要になります。

── しめひもの劣化は分かりますか。

吉川 使用する前に、しめひもを引っ張ってみて、伸びたままになったり、切れたりしないかを確認するといいと思います。特にゴムひもは切れやすいかもしれません。

── 2つ目の「規格品をうたった規格外製品」の流通はとても深刻な問題です。

吉川 はい、深刻です。自分を守るためのマスクの性能が不確かだからです。前述のように、中国などで生産されたN95相当マスクのうち、呼吸用防護具に必要な基準を満たさない製品が相当数あることが問題です。しかし、日本国内には感染症防止のための呼吸用防護具の性能評価を行う公的な機関がありません。米国のような緊急使用許可(EUA)の制度も持っていないのです。このため、海外の不良品が何のチェックを受けることなく国内で流通し、医療現場などで使用されることが懸念されます。各医療機関は自衛するしか手立てがないのが現状なのです。

── 医療機関がN95相当マスクの不良品を見分ける方法はありますか。

吉川 職業感染制御研究会は「N95相当の微粒子用マスクとして感染対策に利用可能なものかどうかを判断する5つの方法」(文末の表1)を発表しています。また、日本医師会総合政策研究機構が、COVID-19関連で、輸入されているN95規格マスクのフィルターの性能評価結果を公表しています。主に折りたたみ型のN95マスクを評価したものですが参考になります(第一報第二報)。

フィットテストで自分に合ったマスクを

── 現在、日本のCOVID-19流行はひと頃に比べて落ち着いていると見えます。この時期にN95マスクに関連して医療機関がすべきことは何でしょうか。

吉川 最も大切なのは、どのような場面でN95マスクを使うのかを、今一度、確認することです。国立感染症研究所と国立国際医療研究センターのCOVID-19に対する感染管理の指針では、エアロゾルが発生する可能性のある手技(例えば気道吸引、気管内挿管、下気道検体採取)を実施する場合に、N95マスク装着が推奨されています(関連記事)。それから、自分の顔にあったN95マスクを選んでおくことも重要です。不良品かどうかの確認も含め、こうした基本的な事前準備をして、第2波に備えるべきです。

── 自分の顔にあったN95マスクを選ぶためには、どうすればいいですか。

吉川 各施設で感染管理の専門家の指導の下でフィットテストを行って、自分にとって漏れ率が少ないマスクであるかどうかを確認することが大切です。フィットテストは、どのN95マスクであれば自分にきちんとフィットするかを確認し、正しい装着方法を習得するためのものです。米国においては、N95マスクの導入時、その後は年に1回、それ以外でも体重の増減などで顔貌が変わったときや、着用者からの要望があったときにはフィットテストを行うことが義務付けられています。日本では一部の粉じん職場でフィットテストの実施が義務つけられています。ですが、感染対策として医療職場での実施義務はありません。しかし、空気感染防止、エアロゾル感染防止のためにN95マスクを着用する医療従事者が、フィットテストなしでN95マスクを着用していることは、マスクの性能評価以前の問題といえます。自分にあったN95マスクを選び、使用する度にユーザーシールチェックを行ってください。なお、フィットテスト、ユーザーシールチェックについては「 N95マスクの適切な装着のための2つのCheck 」をご覧ください。このほか、職業感染制御研究会のウェブサイトで「 N95マスクの選び方・使い方」や「 N95/DS2マスク除染と再利用に関する情報公開ページ」も用意していますので、流行が落ち着いている今のうちに、再確認していただけたらと思います。

 また、フィットテスト研究会を通じて学んだフィットテストインストラクターが全国に1000人以上いますので、彼ら彼女らに相談するとよいと思います。

表1 N95相当の微粒子用マスクとして感染対策に利用可能なものかどうかを判断する5つの方法

(1)日本の国家検定を受けたN95規格相当の防じんマスク(N95マスク相当)かどうか
•国内各製造企業の型番を確認する。防じんマスクのリストにあれば問題ない。
<ポイント>日本の使い捨て式防じんマスク(DS2規格以上)であるかを確認し、それぞれの製造企業の国家検定合格品のリストにあれば性能は問題ない(ただし、液体防護性等が評価されていない製品もあるので、表面の汚染には注意)。
(2)米国の防じんマスク国家検定N95規格の認証を受けた防じんマスク(N95マスク)かどうか
NIOSH-Approved Particulate Filtering Facepiece Respirators
•上記のリンクからウェブに入り、「N95 Manufacturers Index:」のアルファベッドを頼りに、KN95マスクやFFP2マスクの企業名・製品名を探す。企業名・製品名があれば、NIOSH認証の防じんマスクであり、性能は問題ない。
•職業感染制御研究会の法人会員が取り扱っているN95マスクは以下で確認できる。
https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-c02-n95mask.html
•購入予定(入手・購入した)の製品名がない場合は、以下の(3)で対応。
<ポイント>米国国立労働安全衛生総合研究所(NIOSH)の国立個人用保護具技術研究所(NPPTL)が米国の防じんマスク規格の認証した製品リストに載っていれば、性能は問題ない。
(3)COVID-19対応で利用されたN95規格相当の防じんマスク評価を受けたか否か
NPPTL Respirator Assessments to Support the COVID-19 Response
•上記のリンクからウェブに入り、「Manufacturer(製造企業)」「Model Number/Product Line(型番/製品ライン番号)」などを確認し、購入予定(入手・購入した)の製品名であるか確認する。
•当該製品の「Test Report」を確認し、現物の写真と一致しているか確認する。
•「Filtration Efficiency (%)」が95%以上の製品であればフィルター性能は問題ない。
<ポイント>NPPTLが、N95規格の防じんマスクとしては認証していない製品であるが、今回のCOVID-19対応として緊急輸入などされたN95規格相当の製品を評価している。この評価結果が適切であれば、性能は問題ない。
(4)米国のFDAによるEUA認証を受けた製造者と製品のリストにあるか否か
Appendix A: Authorized Respirators
•上記のファイルのリストに掲載されている製造者と製品の性能は問題ない
Respirator Models Removed from Appendix A
•上記のファイルのリストに掲載されている製造者と製品の性能は、N95相当のマスクの性能を担保していない。N95マスク相当として利用せずに、サージカルマスク、一般用マスクとして利用する
<ポイント>米国のFDAが緊急的に認可する(EUAs)かどうか評価したもの。FDA の緊急使用承認に関するページ: Emergency Use Authorizations (EUAs)
上記のEUAsのウェブサイトで2020年4月3日付けの通知「Non-NIOSH-Approved Disposable Filtering Facepiece Respirators Manufactured in China」の右側の欄を確認ください。
-Non-NIOSH Approved Disposable Filtering Facepiece Respirators EUA FAQs(緊急使用承認に関するよくある質問をまとめたもの、英語)
-Appendix A (EUA認証を受けた製造者と製品リスト)
-Respirator Models No Longer Authorized-COVID19(COVID19対応として不認可となった製造者と製品リスト)
 EUA不認可となったものは、NIOSHのNPPTLの評価に基づきます。
(5)定量フィットテスト機器を用いて自施設のN95/DS2レスピレーターの漏れ率を評価する
•下記で紹介している「労研式マスクフィッティングテスターMT-05U型」「ポータカウントプロ・プラスIP」等の定量フィットテスト機器を用いて、入手・購入予定(した)のKN95マスクなどを実際に装着し、漏れ率の評価を行う。
<ポイント>
上記(1)~(4)のリストで対応するだけでなく、実際に漏れ率を測定することは、着用するN95/DS2レスピレーター(N95/DS2マスク)の効果があるかどうか確認する手段となります。フィットテストの手順に従って漏れ率を評価する、またはユーザーシールチェックのように簡易的手法で漏れ率を評価してみます。着用者が視覚的に理解し安心でき、また着用者にとって最も効果的なN95/DS2レスピレーターを選択し、装着方法を学ぶ意味でも有用です。定量機器メーカーから購入あるいはレンタルするか、防じんマスクメーカーの協力などを得るとよいでしょう。
なお、これらの定量フィットテスト機器を用いてのCOVID-19への交差感染の可能性も指摘されています。COVID-19患者の対応、COVID-19感染疑いのある医療従事者が利用することなど、複数人で利用する際は、その使用手順を改めて確認ください。
参考:TSI社「ポータカウントマスクフィットテスターを用いてフィットテストを実施している被験者は、前の被験者の呼気湿気に暴露する事はあるのか?
なお、実際に測定した結果等について有用な知見がえられた施設があれば、ぜひ情報を職業感染制御研究会までお寄せください。

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