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トピック◎イタリアの後ろ向きコホート研究の結果から
トシリズマブでCOVID-19重症例の死亡リスク低減

写真1 6月24日付でLancet誌のオンライン版に掲載された論文

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症例において、トシリズマブ(抗IL-6受容体抗体)の上乗せ治療を受けた群は、人工呼吸器装着と死亡の複合から成るエンドポイントについて、標準治療群よりも改善したことが報告された。イタリアで行われた後ろ向きコホート研究の結果で、論文が6月24日にLancet誌のオンライン版に掲載された。

 後ろ向きコホート研究は、2020年2月21日から3月24日までにイタリアのボローニャとレッジョ・エミリアの三次医療センターに入院したCOVID-19患者と、2月21日から4月30日までにモデナの三次医療センターに入院したCOVID-19患者を対象に行われた。対象は18歳以上の重度COVID-19肺炎患者。

 全員が標準治療(酸素吸入、ヒドロキシクロロキン、アジスロマイシン、抗レトロウイルス薬、低分子量ヘパリン)を受けており、一部の患者にはトシリズマブによる治療も行われた。トシリズマブ治療は、(1)8mg/kg(最大800mgまで)を12時間間隔で2回点滴あるいは静脈内投与、(2)静脈内投与ができない場合は、各大腿部に1回162mgの計324mgを皮下注射、の2通り。

 主要評価項目は、人工呼吸器装着と死亡の複合。性別、年齢、有症状期間、ベースライン時の臓器機能障害度指標(SOFA)などで調整後、カプランマイヤー法による生存時間解析と回帰分析を行い、標準治療群とトシリズマブ治療群で比較検討した。

 その結果、対象期間の入院患者は計1351人で、うち544人が重度のCOVID-19肺炎患者だった。重症例のうち標準治療群は365人で、57人(16%)が人工呼吸器の装着が必要だった。一方、トシリズマブ治療群は179人で、33人(18%)が人工呼吸器の装着を必要とした。

 また、標準治療群のうち73人(20%)が死亡したのに対し、トシリズマブ治療群は13人(7%)で有意に少なかった(P<0.0001)。なお、トシリズマブのいずれの投与方法でも結果に差は見られなかった。

 比較検討の結果、トシリズマブによる治療は、人工呼吸器装着と死亡リスクの低下に関連していた(調整後ハザード比0.61、95%信頼区間0.40—0.92、P=0.020)。特に、トシリズマブ治療と死亡リスクの低下との間には強い関連性があることも分かった(調整後ハザード比0.38、0.17—0.83、P=0.015)。

 これらの結果から著者らは、トシリズマブによる治療は、投与方法にかかわらず、重度のCOVID-19肺炎患者の人工呼吸器装着または死亡のリスクを減らす可能性がある、と結論した。

 COVID-19重症例に対する治療については、英国のオックスフォード大学が主導するRECOVERY(Randomised Evaluation of COVid-19 thERapY)試験で、ステロイド系抗炎症薬であるデキサメタゾンが重症例の死亡を減少させることが明らかになっている(関連記事)。今後のトシリズマブ治療の研究によって、重症例への治療の選択肢が広がることを期待したい。

 なお、論文の原題は「Tocilizumab in patients with severe COVID-19: a retrospective cohort study」、概要はLancet誌のウェブサイトで閲覧できる。

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