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NEWS◎厚労省がガイドライン改定、抗原検査陰性でも追加PCR検査は不要に
抗原検査、発症2~9日は陰性でも確定診断可能に

 厚生労働省は6月16日、新型コロナウイルス感染症COVID-19)の診断に用いる抗原検査について、発症2~9日目の症例では陰性の判定にも使用でき、追加のPCR検査を必須としない方針を決定した。これまでは、抗原検査で陽性の場合は確定診断とできたが、陰性の場合には偽陰性の可能性を排除できないため、確定診断には追加でのPCR検査が必要だった。同日、厚労省は「SARS-CoV-2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」および抗原検査キットの添付文書を改定した。

 抗原検査キットとしては、富士レビオが開発した「エスプライン SARS-CoV-2」(図1)が5月13日に承認・保険収載されている(関連記事)。同キットは、酵素免疫反応を測定原理としたイムノクロマト法により、鼻咽頭ぬぐい液の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原を検出する。キット付属のスワブを鼻腔奥に行き止まる部位まで挿入し、数回擦るようにして粘膜を採取する。検体を含む試料液を反応カセットに滴下し、30分後にカセット上の判定ラインの有無を確認することで、陽性・陰性を判定できる。

図1 COVID-19抗原検査キット「エスプライン SARS-CoV-2」(提供:富士レビオ)

 抗原検査でのウイルス検出にはPCR検査よりも多くのウイルス量が必要であることから、一定の偽陰性が出る可能性がありPCR検査よりも感度が低い。このため、同キットの承認時には、抗原検査で陽性の場合はCOVID-19の確定診断とできる一方、陰性の場合は感染を否定できず、確定診断を行うためには医師の判断でPCR検査を実施する必要があるとされていた。しかし、その後の研究で、発症から2~9日目の症例ではウイルス量が多く、抗原検査とPCR検査の結果の一致率が高いことが明らかになってきた。

 川崎市健康安全研究所は、3~5月に実施した行政検査検体のうち、発症日が判明している232検体についてRNA Copy数(ウイルス量)の分布を調査。発症2日目から10日以内の症例においては、8割以上の検体で1600copy以上、9割以上の検体で400copy以上のRNA Copy数が確認された。抗原検査キットの臨床性能試験では、同キットとPCR検査の陽性一致率は1600copy以上の検体で100%(12例中12例)、400copy以上の検体では93%(15例中14例)であったことから、発症2~10日の症例については抗原検査で検出するのに十分なウイルス量を有すると報告している(外部リンク)。

 東邦大学医療センター大森病院の院内陽性者15例を対象としたPCR検査と抗原検査の比較では、発症から9日目までの8例中7例で、両検査結果が一致した。国立国際医療センターにおけるCOVID-19入院患者の鼻咽頭ぬぐい液(保存検体)10例を対象とした調査では、発症から10日以内の6検体中、4検体でPCR検査と抗原検査の陽性が一致。自衛隊中央病院に入院し、発症後14日以内に検体を採取したCOVID-19患者に対する研究でも、保存検体の咽頭ぬぐい液でPCR検査陽性となった15例のうち12例において、抗原検査でも陽性と判定された。

 抗原検査とPCR検査の結果に高い一致率が認められたとの研究結果を受けて、厚労省は「SARS-CoV-2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」を改定。発熱などCOVID-19を疑う症状の発症後2日目以降、9日目以内の者に対しては、抗原検査で陰性となった場合にも追加のPCR検査を必須としない方針を示した(図2)。症状発症日(1日目)および発症後10日目以降の場合、また抗原検査で判定されたものの、臨床経過から感染が疑われる場合には、確定診断のため医師の判断でPCR検査を行う必要があるとしている。

図2 抗原検査後の対応(出典:厚生労働省「SARS-CoV-2抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」)

 無症状者に対する使用や、無症状者のスクリーニング検査目的の使用は、適切な検出性能を発揮できないため、これまでと同様に使用を推奨していない。ただし、緊急入院を要する患者で症状の有無の判断が困難な場合には、症状があるものと判断する。クラスターが発生している医療機関や施設などにおいて、無症状の濃厚接触者などに対する抗原検査も推奨しない。また、入院患者の退院判定についても、PCR検査との一致性に関するエビデンスが不十分であることなどから、抗原検査は適さないとしている。

 厚労省はガイドラインの改定と併せて、有症状者・無症状者に対するPCR検査と抗原検査の使い分けについての表を公開している(図3)。なお抗原検査については、感度について十分理解した上で、医師の必要性の判断に基づき使用することとしている。

 日本感染症学会理事長の舘田一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授)は「PCR検査体制を圧迫しないためにも、抗原検査で迅速に陽性・陰性を判定するのは大事な方向性だ。ただし、現時点では、抗原検査には鼻咽頭ぬぐい液を使用するため厳重な感染防御が必要で、検体採取時の感染リスクが低い唾液PCR検査の方が使い勝手が良い医療機関もまだ多いのではないか。もし唾液での抗原検査ができるようになれば、現場での検査の状況は劇的に変わるだろう」との見解を示す。

図3 PCR検査と抗原検査の使い分け(出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症にかかる各種検査」)

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