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NEWS◎3都府県で約8000人を対象に実施の抗体検査結果を発表
厚労省実施の抗体検査、東京で陽性率0.10%

 厚生労働省は6月16日、3都府県で計7950人を対象に実施した新型コロナウイルスSARS-CoV-2抗体検査の結果を発表した。抗体陽性率は東京都で0.10%、大阪府で0.17%、宮城県で0.03%だった。

 厚労省は6月1~7日にかけて、東京都、大阪府、宮城県でそれぞれ一般住民約3000人を無作為抽出して血液を採取し、過去に新型コロナウイルスに感染した人の割合を調べる抗体検査(定量検査)を実施した。対象とした3都府県は、100万人以上の都市を有し人口が200万人以上の都道府県のうち、人口10万人あたりの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)累積感染者数が多い2自治体(東京都、大阪府)と少ない1自治体(宮城県)としている。

 使用した測定機器は、異なる免疫測定法を用いた3種類の装置。陽性の判定をより正確に行うためとして、米国Abbott社(化学発光免疫測定法[CLIA法])およびスイスRoche社(電気化学発光免疫測定法[ECLIA法])の両方の検査試薬・装置で陽性が確認された場合のみ、陽性(抗体保有)と判定している。米国Mokobio Biotechnology社(蛍光免疫測定法[FIA法])の試薬・装置での結果は参考値とした。

 調査への参加に同意を得た計7950人に対する抗体検査の結果、東京都では1971人中2人(0.10%)、大阪府では2970人中5人(0.17%)、宮城県では3009人中1人(0.03%)が陽性と判定された(図1)。いずれも各自治体の累積感染者数の割合と比べると高い値となっているが、現時点でも大半の人が抗体を保有していないことが明らかになった。なお、抗体の体内での持続時間や、2回目の感染から守る機能があるのかといった抗体の性質については、確定していないとしている。

図1 3都府県での抗体検査結果(出典:厚労省の発表資料

 これまでに国内では複数の団体が抗体検査を実施しており、6月にソフトバンクグループが同社や取引先の社員および医療従事者、計4万4000人を対象に行った抗体定性検査では、全体の0.43%、医療従事者に限っては1.79%が陽性と判定された(関連記事:全国4万人規模の抗体検査、0.43%が陽性)。

 東京大学先端科学研究センターなどのメンバーからなる新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会は、東京で2回に分けて1000人を対象とした抗体定量検査を実施し、7人(0.7%)が陽性と判定された(外部リンク)。同協議会は、福島県の医療施設に勤務する医療・介護従事者680人を対象とした抗体検査について、定性検査で陽性となった58人のうち、定量検査では6人のみが陽性と判定されたとの結果も報告している(関連記事:抗体定性検査、陽性者の9割が定量検査で陰性に)。

検査法により陽性率にばらつき

「第2波の到来時には、第1波と同様かそれ以上に感染が拡大するかもしれない」と指摘する東邦大の舘田一博氏。

 今回の調査では、いずれの自治体での結果においても、検査方法によって陽性判定された人数に幅がある。例えば東京都では、Abbott社の試薬では6人(0.30%)、Roche社の試薬では4人(0.20%)が陽性と判定され、両方で陽性となったのが2人(0.10%)となっている。参考値となっているMokobio Biotechnology社の試薬では、3都府県とも1%以上が陽性と判定されている。

 日本感染症学会理事長の舘田一博氏(東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授)は「各検査法の閾値前後の抗体価だった人が多いのではないか。閾値の設定によって陽性判定が変わることはあり得るため、陽性率に数倍の幅がある前提で受け止める必要がある」と指摘する。

 それでも、欧米では10%前後の抗体陽性率が報告されている地域もあることを踏まえて、「人口の99%に感染歴がないという結果は、水面下での感染も含め、予想以上に感染が広がっていなかった印象だ」と舘田氏。この背景として同氏は、「日本のマスクを着ける習慣や衛生意識、クラスターを抑え込む戦略などが相補的に働き、感染抑止に功を奏したのではないか」と分析する。

 一方、99%の人が抗体を保有していないことから、舘田氏は「第2波の到来時には、第1波と同様かそれ以上に感染が拡大するかもしれず、十分な備えが必要だ」と警鐘を鳴らす。現時点で新型コロナウイルスの季節性については明らかになっていないが、仮に秋冬に活発になりやすい感染症であれば、「第2波は11月から5月まで7カ月もの期間続き、長期にわたる感染者の発生で医療崩壊を引き起こす可能性もある」と舘田氏。第2波が長期戦になることを念頭に置いて、医療体制の「ハコ・モノ・ヒト」、すなわち患者を治療するための病床(ハコ)、人工呼吸器やマスクなどの医療資源(モノ)、そして治療や感染対策を担う医療者(ヒト)の3つの要素を確保する重要性を強調している。

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シリーズ◎新興感染症
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する話題を中心にお届けしています。

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