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検証◎日本のCOVID-19対応に何が足りなかったのか
欧州型コロナ襲来で、後手に回った入国規制

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、再度の感染拡大(次なる波)が予想され、長丁場の対応が必要──。これは、国の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が繰り返し訴えてきたことだ。5月29日に発表された新たな提言でもこの点を再確認し、これまでの対策を振り返って様々な課題を明らかにした。日本のCOVID-19対応に何が足りなかったのか。

 わが国のCOVID-19流行では、6月10日24時現在、1万7292人が感染し、920人が死亡した。人口10万人当たりでは累積感染者数が13.7人、死亡者数が0.7人となる。ちなみに全世界の感染者数は同時点で727万3958人、死者は41万3372人だ(WHO、Situation report-143)。同様に人口10万人当たりでは累積感染者数が94.3人、死亡者数が5.4人となる。この数字を見る限り、結果として日本のCOVID-19対応はまずくはなかったといえそうだ。しかし、次の波でもうまくいくとは限らない。

 これまでの流行状況をまとめたのが図1だ。国立感染症研究所による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム分子疫学調査によって、わが国では、初期に生じた中国経由の第1波(中国からの移入)の封じ込めに成功したことが明らかにされた。しかしながら、3月中旬以降に欧米経由の第2波(欧米等からの移入)が発生し、緊急事態宣言に至るほどの感染拡大につながったことも示されている(関連記事)。

図1 日本のCOVID-19流行の推移と節目となった出来事(報告日ベース、0529提言を基に作成。図2、表1も)

 振り返ると、専門家会議のメンバーが「急速な拡大に進むのか、収束できるのかの瀬戸際」と訴えたのが2月24日。それ以降、大規模イベントの自粛や小中高の臨時休校などの要請が相次いで発せられた。国民一人ひとりの理解と協力のもとで、3月に入ってからの患者数は2桁台で続いたものの、急拡大することなく「瀬戸際で踏ん張った状態」を維持し続けた。

 しかし、3月末から状況が一変、4月上旬のピークへ向けて、患者数の増加が加速してしまった。中国経由の第1波を踏みつぶせた一方で、なぜ欧米経由の第2波の急拡大を許してしまったのか。

欧州型の感染拡大を許した入国規制の遅れ

 図2は、発症日ベースで見たCOVID-19確定患者数の推移だ。発病日が分かっている症例と診断日データから発病日を推定した症例をあわせて描き出したものだという。これを見ると、瀬戸際で踏ん張っていた背後で、海外からの流入例が相次ぎ、3月中旬にはピークを形成していたことが分かる。それなのに、日本が入国規制に本格的に乗り出したのは、3月下旬に至ってからだ。3月27日にイタリア全域、ドイツ、フランスなど欧州の大部分からの入国を禁止とし、これに米国や英国、中国全域などからの入国も加えたのは4月3日だった。

図2 発症日ベースで見たCOVID-19確定患者数の推移(横軸は推定感染日。青線は実効再生産数の代表値で、濃い青の影が95%信用区間。棒グラフは発症者数。色の濃い部分が海外からの流入例)

 提言では台湾との比較の中で、入国規制の遅れに触れている。表1に見るように、欧米の先進諸国などと比較すると、確かに日本のCOVID-19対策は「新規感染者数の増加を抑制し、市民の生命と健康を守り、死亡者数や重症者数を低い水準で推移させている」(提言)と言える。しかし、アジアに目を転じると、東アジアの死亡者数は少なく、特に台湾は人口10万人当たり死亡者数が0.03と日本の20分の1にとどまる。

 この理由として提言は、台湾では「2003 年の重症急性呼吸器症候群(SARS)などの経験を基に、COVID-19が流行する前からの準備が日本に比べ十分できていた」と指摘。さらに、台湾の方がより早く水際対策による対応をとったことも理由に挙げた。台湾は、2月6日に中国全土からの入国を禁止し、3月19日からはすべての外国人の入国を禁止していた。

 なぜ、日本の入国規制が遅れたのかについては、政策決定プロセスを検証する中で明らかにしていかなければならないだろう。

表1 世界の累積感染者数と死亡数(単位:人)

海外との往来再開が「次の波」のきっかけに?

 提言は、欧州型の感染拡大を念頭に「今後、海外との往来の再開が、国内での再度の流行拡大のきっかけとなる可能性がある」と警鐘を鳴らしている。その上で、以下の水際対策の見直しの方向性を提示した。

・今後の水際対策の手段の検討にあたって、政府部内において十分な議論をし、各国の流行状況や国を越えた人々の往来の正常化を目指すための国際的な取組みの動向を見極めつつ、出口戦略としての開国並びに感染拡大の防止、入国者が発症した場合に対応する医療機関の負担、さらには、流行の拡大に伴う、再度の入国制限の考え方などを明らかにし、対策を実行する必要がある。
・また、国内で感染拡大を防ぐ新しい生活様式が定着するまでの当面の間は、入国者を一定の数に限定するなどして徐々に緩和を目指すことが適当である。

 入国規制緩和のタイミングが早すぎて「次の波」を招き入れることがないよう、慎重な対応をしなければならないのは言うまでもない。

 今回は入国規制に焦点を当てた。提言ではこれ以外にも、以下のような様々な課題が浮かび上がったと総括している。次回は、これらの課題解消のための具体的な動きを追う。

(1)保健所の業務過多により相談から検査までの時間がかかった
(2)検体採取機関の不足・キャパシティ不足により、検査が必要な方に対して、PCR等検査が迅速に行えなかった
(3)医療機関が逼迫し、受入病床・宿泊療養施設の確保に時間を要した
(4)感染者のピーク時に必要となる衛生資材(サージカルマスクなどの個人防護具 、消毒用エタノール等)が早期に確保できなかった
(5)感染者数が増加する中で感染症サーベイランスシステムの入力率が低下した
(6)広報・リスク/クライシスコミュニケーションの体制が不十分であった

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