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解説◎With COVID-19の夏に向けた新たな熱中症予防とは
「マスクをはずして休憩」も大切、ただし……
学術団体からのコンセンサス・ステートメントを読む

 適宜マスクをはずして休憩することも大切。ただし、はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮して──。これは、日本救急医学会や日本感染症学会などの学術団体が発表した「新しい生活様式」下での熱中症予防に関する提言の一部です。長く続いた外出自粛の影響もあり、私たちの体は夏への準備が十分にできているとはいえません。With COVID-19の夏に向けて取り組むべき、新たな熱中症予防はどうしたらいいのでしょうか。

 提言は、日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会の4つの学会が合同で立ち上げた「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループ」がまとめたものです。6月1日付で、それぞれの学会ウェブサイトで公開されました(写真1)。

 冒頭の「はじめに」では、「新しい生活様式」と熱中症との関係に触れています。新しい生活様式とは、国の新型コロナウイルス感染症専門家会議が新型コロナウイルスの感染拡大を予防する基本として提唱したものです。With COVID-19の時期に国民一人ひとりが取り組むべき感染防止の3原則(身体的距離の確保、マスクの着用、手洗い)に加え、「密集、密接、密閉」の3密の空間を避けることや、テレワークなどの新たな働き方の推進などを含んでいます。

 こうした新しい生活様式下では、長期にわたって室内に滞在することになります。また、いわゆるフィジカルディスタンシング(物理的に人と人の間の距離を取ること)を守ろうとするために人と人のつながりが減少しがちです。このため、提言は「熱中症の発症リスクが上がってしまう」との危惧を示しました。熱中症の多くは高齢者の屋内での発症であることから、長期の室内滞在で熱中症リスクは高まります。また、熱中症予防では、周囲にいるもの同士が互いに注意し合うことが重要なのに、フィジカルディスタンシングを徹底するとこれができなくなります。

 COVID-19を防ぐための新しい生活様式を励行するあまり、熱中症に罹ってしまっては元も子もありません。そこで関連学会がワーキンググループを立ち上げて、with COVID-19の夏における熱中症予防の注意点を緊急提言としてまとめたのでした(表1)。

表1 With COVID-19の夏における熱中症予防の注意点
(1)屋内においては、室内換気に十分な配慮をしつつ、こまめにエアコン温度を調節し室内温度を確認しましょう。
(2)マスク着用により、身体に負担がかかりますので,適宜マスクをはずして休憩することも大切です。ただし感染対策上重要ですので,はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮し、周囲環境などに十分に注意を払って下さい。また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう。
(3)体が暑さに慣れていない時期が危険です。フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。
(4)熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し、社会的孤立を防ぐべく、頻繁に連絡を取り合いましょう。
(5)日頃の体調管理を行い、観察記録をつけておきましょう。おかしいなと思ったら、地域の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう。

 以下では表1の(1)と(2)と(4)について見ていきます。

 (1)では「換気」がポイントです。熱中症を防ぐためならばエアコンによって室温を適温に保てばいいのですが、これにCOVID-19対応が加わるので「換気」が必要になります。提言は「エアコンを付けていれば新鮮な空気に入れ替わっていると思われがち」と指摘。「通常の家庭用エアコンは空気を循環させるだけで、換気の機能はありません」と注意を促します。その上で、以下の厚生労働省の推奨を紹介しています。

 密閉空間にしないために、屋内の滞在時は「風の流れができるように、部屋の窓を毎時2回以上は開放(数分程度/回)し、換気を確保すること」。

 (2)では、「マスクをはずして休憩することも大切」と指摘した点が重要です。提言は「マスク着用が身体、特に体温に及ぼす影響を学術的に研究した報告はあまりありません」と前置きし、以下の報告を紹介しています。

 「一般的なマスクに近いサージカルマスクを装着した人と、そうでない人を1時間、5㎞を室内のジョギングマシーンで運動負荷を与え、その前後でマスク内温度や体温などを比較したRobergeらの研究があります。これによると、マスク装着し運動した人は有意に心拍数、呼吸数、二酸化炭素が増加しました」。

 マスク着用により身体への負担がかかることから、提言では「適宜マスクをはずして休憩することも必要」と注意を促しました。ただし、「はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮して」と念を押しています。なお、マスクをつける場合は一般的なマスクを使用すべきで、COVID-19患者から出たエアロゾルなどを吸い込む可能性があるような特殊な状況でない限り、不必要にN95などの高機能マスクを使用しないよう求めています。

 (4)では、フィジカルディスタンシングを守ろうとするために、人と人のつながりが減少しがちであることに注意を促しています。いわゆる熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の場合、特に高齢者では、日常生活のなかで起こる「非労作性熱中症」が多いことが分かっています。提言は、非労作性熱中症は日常生活の中で徐々に進行し、周囲の人に気付かれにくく対応が遅れる危険性があると指摘。COVID-19対策の中で、フィジカルディスタンシングを守ろうとするがために人と人のつながりが減少しないよう、「高齢者や独居の方に、声掛けを頻回に行い、孤独を防ぐことが重要」と訴えています。

 具体的には以下の3点を挙げ、「フィジカルにはディスタンスを取りつつ、ソーシャル(社会的)には孤立させないことが重要」とまとめています。

・家族や友人と電話で話し、元気なところを確認する。
・メール、SNSなどを活用し、頻回に体調を確認する。
・身体の異常があったら声を掛けられるよう、連絡先を控えておく、教えておく。

 With COVID-19の夏は、世界中の人にとって初めての経験となります。提言は「アップデートされる可能性がある」としつつ、「引き続きエビデンス検索を進めるとともに、コロナ禍における熱中症患者さんの情報を収集して参ります」と結んでいます。

■参考文献
「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」について(日本救急医学会)

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