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NEWS◎疫学調査としての抗体検査では「定量検査を行うべき」
抗体定性検査、陽性者の9割が定量検査で陰性に

 東京大学先端科学研究センターなどのメンバーからなる新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会の研究グループは5月31日、680人の医療・介護従事者を対象に行った新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の抗体検査の結果を発表した。680人のうち58人が定性検査の簡易検査キットでは陽性だったが、このうち定量検査で陽性と判断されたのは6人(全体の0.88%)であり、定性検査で陽性判定された人の約9割が定量検査では陰性となった。同グループは、疫学調査としての抗体検査では、定量検査を行うべきとの見解を示している。

 血液中のIgG抗体やIgM抗体を検出する抗体検査には、イムノクロマト法による簡易検査キットを用いて陽性・陰性を判定する定性検査と、化学発光による自動測定を行う自動化血液検査機を使用し、定量的に抗体価を測定する精密検査(定量検査)がある。同協議会では、感染既往歴の診断として、IgG抗体価が10AU/mL以上で陽性、5AU/mL以上~10AU/mL未満では要経過観察、5AU/mL未満で陰性とする基準を示しており、本研究でもその基準を用いている。

 同研究グループは、ひらた中央病院(福島県平田村)に勤務する医療・介護従事者680人に対して、IgG抗体の定量検査を実施。その結果、0.88%に当たる6人が陽性だった。同院では院内感染は起こっておらず、有症状者やPCR検査での陽性者はいなかったが、既に行われていた抗体定性検査で680人中58人が陽性と判定されていた。定量検査で陽性と判定された6人は、いずれも定性検査でも陽性だった。

 同研究グループは5月に東京で500人を対象とした抗体定量検査を実施しており、その際には3人(0.6%)が陽性と判定されていた。新型コロナウイルス抗体検査機利用者協議会のアドバイザー会議代表を務める児玉龍彦氏(東京大学先端科学技術研究センター名誉教授)は「サンプル数は限られているものの、福島と東京での調査でほぼ一貫した結果が得られた」としている。

「疫学調査には定量検査を」

「定性検査を疫学調査に用いるのは望ましくない」と語る東京大の児玉龍彦氏。

 抗体定性検査については現在、多数の簡易検査キットが存在するが、今回どのキットが使用されたかは明らかにされていない。定性検査で陽性だった人の多くが定量検査で陰性となった今回の結果を受けて、児玉氏は「抗体検査は感度が高く、定性検査では抗体価が低くてもノイズの影響で陽性と判定される場合がある。ノイズはキットによっても異なり、定性検査を疫学調査に用いるのは望ましくない」と指摘する。

 大規模集団に対する既感染率の評価を行う際には、「検診時の残余血清などを活用して定量検査を実施していくべき」と児玉氏。ただし、抗体検査は定性・定量検査とも感度が高いことを踏まえ、「診断時に定性検査を迅速に行った上で、陽性者に対して追加でPCR検査を行うといった使用法は考えられる」としている。

 なお、同協議会では、感染既往歴の診断において、IgG抗体価10AU/mL以上を陽性としており、IgMは単体では診断に使用していない。ただし、「IgG抗体価が高い人に対して、感染の状態を推定する補助的手段としてIgMが活用できる」と児玉氏。具体的には、IgGが陽性(10AU/mL以上)かつIgM抗体価が10AU/mL以上の場合、その時点でも感染している可能性があり、引き続き注意深く観察が必要としている。一方、IgGが陽性でもIgM抗体価が10AU/mL未満で、2週間以内の症状がなければ、既感染と推定できる。

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