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New England Journal of Medicine誌から
クロロキンはCOVID-19患者の転帰と関連せず
ニューヨークの基幹病院における観察研究結果

2020/06/02
佐古 絵理=メディカルライター

 ニューヨークの基幹病院にCOVID-19で入院した連続症例の解析から、ヒドロキシクロロキンの投与は気管挿管または死亡リスクの上昇にも低下にも関連してはいなかったと、米国コロンビア大学などのグループが発表した。論文はNew England Journal of Medicineのウエブサイトで5月7日、公開された。

 COVID-19に対するヒドロキシクロロキンの効果は、26例を対象としたフランスの非盲検単群試験で初めて報告された。その研究では一定の有効性が示されたが、追跡不能や状態悪化により6例が除外されていたため、結果の解釈が難しかった。そこでニューヨークにあるプレスビテリアン病院・コロンビア大学アーヴィングメディカルセンター(NYP-CUIMC)で、ヒドロキシクロロキンの効果を検証する観察研究が行われた。

 対象は、2020年3月7日~4月8日にCOVID-19により入院した全成人患者とし、2020年4月25日まで追跡した。救急部門受診後24時間以内に気管挿管した患者、死亡した患者、他施設に移送した患者は除外した。

 NYP-CUIMCでは当時、中等度~重度の呼吸器障害(安静時の酸素飽和度が94%未満と定義)に陥ったCOVID-19患者に対し、治療選択肢の1つとしてヒドロキシクロロキン(初日に600mgを1日2回、その後は400 mgを1日1回4日間投与)を提案していた。

 この研究ではベースラインを救急部門到着から24時間後とし、ベースライン時や追跡期間中にヒドロキシクロロキンを投与された場合に、ヒドロキシクロロキン投与患者とみなした。主要評価項目はベースラインから気管挿管または死亡までの期間とした。

 Cox比例ハザードモデルを用い、ヒドロキシクロロキン投与患者の転帰を未投与患者と比較した。未補正の解析に加え、性別、慢性肺疾患、BMIで層別化し、年齢、人種・民族、保険、現在喫煙、既往歴、使用薬、バイタルサイン、受診時の臨床検査で補正した多変量解析、さらに傾向スコアを用いて逆確率重み付けを行った多変量解析を実施した。

 COVID-19により入院した1446例中、受診後24時間以内の気管挿管や死亡症例を除外した1376例を解析対象とした。追跡期間の中央値は22.5日間であり、4月25日のデータカットオフ時点の死亡者は232例、生存して退院した患者は1025例、入院中が119例だった(入院患者で挿管されなかった患者は24例のみ)。

 1376例中811例(58.9%)にヒドロキシクロロキンが投与されていた。投与期間の中央値は5日間だった。ヒドロキシクロロキン投与患者の45.8%は救急部門受診から24時間以内、85.9%は48時間以内に投与が開始されていた。ヒドロキシクロロキン投与症例は、ベースライン時の動脈血酸素分圧と吸入気酸素分圧の比(PaO2:FIO2)が、非投与症例より低かった(中央値は223対360mmHg)。

 主要評価項目は346例(25.1%)に発生した。180例が挿管され、その後66例が死亡した。166例は挿管されることなく死亡した。

 主要評価項目はヒドロキシクロロキン投与症例の262例(32.3%)、非投与症例の84例(14.9%)に発生し、未補正解析ではヒドロキシクロロキン投与症例のリスクは未投与症例を上回った(ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[95%CI]:1.84-3.02)。

 しかし、傾向スコアによる逆確率重み付けを行った多変量解析では、ヒドロキシクロロキンの使用と気管挿管または死亡との間に、有意な関連は見られなかった(HR:1.04、95%CI:0.82-1.32)。ベースラインを受診後48時間以内とした感度解析や、ベースライン前のヒドロキシクロロキン投与開始に限定した感度解析でも、結果は同様だった。

 著者らは、クロロキンの別の臨床試験が、高用量群でQTc延長や死亡のリスク上昇で中止されたことに言及。現在NYP-CUIMCでは、院内のCOVID-19治療ガイダンスから、ヒドロキシクロロキン投与の提案を削除したという。今回の研究は観察研究であり信頼区間の範囲が比較的大きいことから、有効性や害がないと断じることはできないが、現時点では効果検証のために行うランダム化された臨床試験以外で、ヒドロキシクロロキンの使用は支持できないとしている。

 この研究は米国NIHの資金提供を受けて行われた。

論文:
Geleris J, et al. Observational study of hydroxychloroquine in hospitalized patients with Covid-19. N Engl J Med. 2020 May 7. doi: 10.1056/NEJMoa2012410.

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